安全・信頼性は、鉱山用送風機と換気システムにおいて最も重視される要素です。坑内では、ガスや粉じんの滞留、酸素濃度の低下、高温環境など、多くの危険要因が重なっており、送風機が停止したり換気能力が不足したりすると、労働災害や生産停止につながるおそれがあります。そのため、主換気送風機や局所送風機、防爆送風機、集じん送風機などは、高い信頼性と冗長性を備えた設計が求められます。安全・信頼性を確保することは、単に機器が故障しにくいというだけでなく、異常が発生した場合に被害を最小限に抑える仕組みを備えることも含まれます。
鉱山用送風機の安全設計では、まず防爆構造や耐火構造、耐高温構造などの採用が重要です。ガスや粉じんが存在する環境では、防爆電動機や防爆端子箱を用い、火花や高温部が外部へ露出しないようにします。また、羽根車の強度計算や回転体バランスの最適化を通じて、破損や異常振動のリスクを低減します。軸受やシール部についても、潤滑や冷却を適切に設計し、長時間連続運転に耐えうる構造とすることで、突発的な停止を防ぎます。さらに、換気システム全体で見ると、主扇の二重化や予備機の待機、複数ルートの通風計画などが採用され、万一のトラブル時にも最低限必要な換気を維持できるように配慮されます。
信頼性の高い運転を実現するためには、設計や製造だけでなく、運転管理と保守点検も重要です。運転中は、風量や静圧、電流値、軸受温度、振動レベルなどを定期的に監視し、基準値からの変化を早期に把握することが求められます。異常な振動や温度上昇が確認された場合には、運転条件や設置状況を確認し、必要に応じて点検や部品交換を行います。予防保全の考え方に基づき、定期的なグリースアップや軸受交換、ボルトの増し締め、ダクトや羽根車の清掃を実施することで、送風機の寿命を延ばし、突発停止を防止します。
最近では、オンライン監視やデータ解析技術を活用して、安全・信頼性をさらに高める取り組みも進んでいます。振動や温度、電流などの運転データを常時記録し、傾向管理や予知保全に活かすことで、初期の異常を早期に検知し、計画的な停止と整備へとつなげることができます。また、換気シミュレーションや通風計算と組み合わせることで、異常時の風向切り替えや避難経路の確保など、安全計画全体の精度向上にも寄与します。安全・信頼性を最優先にした鉱山用送風機と換気システムの構築は、作業者の生命を守り、生産を安定させるための不可欠な条件であり、今後も継続的な改善と技術導入が求められます。