防音バリアは、鉱山用送風機や集じん送風機などから発生する騒音を物理的に遮断し、周囲への伝播を抑えるための防音設備です。主扇は大出力の電動機と大型羽根車を備え、運転時には高い騒音レベルとなることが多いため、地上施設では周辺住民や他設備への影響が問題となる場合があります。地下坑道内でも、局所送風機や集じん機周辺に防音バリアを設置することで、作業者が受ける騒音レベルを低減し、快適で安全な作業環境の確保に役立てることができます。
防音バリアの基本構造は、遮音性能を持つ板材と内部の吸音材で構成されるパネルを、送風機周囲に壁状または囲い構造として設置するものです。鋼板や厚手パネルで外殻を形成し、その内側にグラスウールやロックウールなどの吸音材を充填することで、送風機から放射される音を反射・吸収し、外部への漏洩を大幅に低減できます。開口部が大きいと防音効果が低下するため、点検扉やケーブル貫通部には遮音性能を考慮した構造を採用することが重要です。排気ダクトや吸気口については、防音バリアと組み合わせて消音器を設置し、音の通り道となる部分でも十分な騒音低減効果が得られるようにします。
防音バリアの設計においては、防音性能と保守性・換気性のバランスを取ることが求められます。送風機や電動機、軸受などへのアクセスが必要なため、点検扉や取り外し可能なパネルを設けてメンテナンス性を確保しなければなりません。また、防音バリア内部の熱がこもると機器に悪影響を与えるため、通風ルートを確保しつつ騒音漏洩を最小化する工夫が必要です。鉱山用送風機では、送風機室全体を防音構造とし、室内に吸音材を配置する方式もよく用いられます。この場合、換気や冷却の計画も合わせて検討し、騒音低減と機器保護を同時に満足させる設計が重要です。
防音バリアは、他の騒音対策と組み合わせることで最大の効果を発揮します。低騒音型送風機の採用や回転数制御による基本騒音の低減に加え、防振装置による振動伝播の抑制、排気消音器の設置などを行ったうえで、防音バリアにより残存する騒音をシールドするという発想が有効です。定期的な点検により、パネルの隙間や吸音材の劣化を確認し、必要に応じて補修・更新を行うことで、防音性能を長期間維持できます。防音バリアを適切に活用することで、鉱山用送風機の騒音問題を大幅に軽減し、環境配慮型の換気設備として社会的な信頼性を高めることが可能となります。
