防爆換気送風機は、爆発性ガスや可燃性粉じんが存在する危険場所において、安全かつ確実に換気を行うために設計された送風機です。対象となる現場は、メタンガスを含む鉱山や選炭工場、溶剤や可燃性ガスを扱う化学プラント、塗装ブース、粉体処理設備など多岐にわたります。これらの危険場所では、電動機や配線、回転部品からの火花や高温部が爆発の引火源となるおそれがあるため、防爆等級に対応した構造と材料の選定、そして適切な換気計画に基づく運転が不可欠です。防爆換気送風機は、こうした厳しい条件を満たしつつ、必要な風量と静圧を安定して供給する換気設備として位置づけられます。
防爆換気送風機には、軸流型と遠心型があり、用途と設置条件に応じて選定されます。軸流型は、大風量を比較的低静圧で供給できるため、鉱山通気やトンネル換気、工場全体の換気などに適しています。一方、遠心型は、ダクト損失が大きいシステムや、集じん装置・洗浄塔などの機器と組み合わせる場合に有利であり、高静圧が必要なプロセス換気に向いています。いずれの形式であっても、防爆換気送風機の電動機は防爆構造とされ、端子箱やケーブルグランド、制御盤も適切な防爆仕様が採用されます。さらに、羽根車とケーシングの間隔やシール構造は、摩耗や異物混入による火花の発生を防ぐ設計となっています。
防爆換気送風機を導入するにあたっては、危険場所の区分と対象物質の特性を正確に把握することが重要です。爆発性ガスのグループ、温度等級、粉じんの性状などに応じて、防爆等級や構造形式を選定します。また、必要な換気量や風速、更新回数などの換気条件を整理し、ダクトレイアウトや排気位置を含めた換気システム全体の設計を行います。鉱山では通気計算やCFD解析を活用し、化学プラントや工場では局所排気フードや全体換気とのバランスをとりながら、防爆換気送風機の容量と設置位置を決定します。こうしたプロセスを通じて、過不足のない換気性能と安全性を両立することができます。
運用段階では、防爆換気送風機の防爆性能と換気性能を維持するための定期点検と記録管理が欠かせません。防爆部品の締結状態やガスケットの劣化、ケーブルの損傷などは、外観検査と必要に応じた分解点検によって確認します。また、羽根車の汚れや腐食、バランス不良は振動や騒音の増加として現れるため、振動測定や音響測定を活用した状態監視が有効です。通気測定やガス濃度測定と組み合わせることで、防爆換気送風機が換気計画どおりの性能を発揮しているかを継続的に評価し、必要な改善を行うことができます。防爆換気送風機は、このような管理のもとで、危険場所における安全な作業環境を支える重要な換気設備として機能します。