地下工事換気は、トンネル工事や地下鉄建設、シールドトンネル、地下設備工事などの現場で、作業員の健康と安全を守るために必要不可欠なシステムです。これらの現場では、掘削機械や発破、コンクリート吹付け、溶接作業などにより大量の粉じんや排気ガスが発生し、換気が不十分な場合、視界不良や酸素不足、ガス蓄積による事故につながる危険性があります。地下工事換気では、鉱山換気で培われた送風機技術と通気設計のノウハウを応用し、限られた空間で効率的に空気を入れ替えることが求められます。
地下工事換気の基本方式は、押込式換気・排気式換気・押排併用換気の三つに大別されます。押込式換気では、坑口やシャフト付近に設置した大風量軸流送風機からフレキシブルダクトを通じて新鮮空気を作業場所まで送り込みます。この方式は機械構成がシンプルで、導入コストが比較的低いという利点があります。一方、排気式換気では、作業場所近くに設けた排気口から汚染空気を吸い出し、ダクトを通じて坑外に排出します。排気式は粉じんや排気ガスを効率的に集中的に除去できる点が優れており、エンジン駆動機械が多数稼働する現場に適しています。押排併用方式では、送気と排気のバランスを調整しながら、作業エリアで新鮮空気の流れを作りつつ汚染空気を速やかに排出することができます。
地下工事換気に使用される送風機は、移設性と耐久性が重要な要件です。工事の進行に合わせて作業場所は前進していくため、送風機とダクトの位置を頻繁に変更できるよう、軽量でコンパクトな筒型軸流送風機やモジュール式送風機が採用されます。フレキシブルダクトは折り畳みが容易で、限られたスペースでも取り回しやすい構造になっています。また、粉じんや湿気が多い環境でも安定稼働できるよう、送風機のモーターや羽根車には防塵仕様や防食塗装が施されます。都市部の地下工事では、騒音規制に対応するため、送風機にサイレンサーを組み合わせたり、運転条件を最適化したりすることも一般的です。
換気計画の段階では、作業員数、使用機械の種類と出力、粉じん発生量、坑道断面などをもとに必要換気量を算定し、それに見合う送風機能力とダクト径を決定します。さらに、緊急時に煙や有毒ガスを迅速に排出するための避難換気も考慮し、予備送風機や代替電源の確保が検討されます。近年では、風速計やガスセンサーを用いた換気状態のモニタリングが進み、地下工事換気の運転管理がより高度化しています。鉱山用送風機メーカーの地下工事向け換気ソリューションは、トンネル・地下鉄・シールド工事など多様なプロジェクトで採用され、安全で効率的な地下施工を支えています。