ダクト清掃は、鉱山用送風機が供給する換気風を坑内の隅々まで効率よく届けるために不可欠な保全作業です。鉱山の換気ダクト内部には、採掘作業で発生する岩粉や粉じん、湿気を含んだ微細粒子などが長期間にわたり堆積し、断面積の有効部分を狭めるとともに、表面粗さを増大させて圧力損失を大きくします。その結果、同じ送風機出力であっても実際に届く風量が低下し、作業場の換気状態が悪化したり、送風機側の負荷が増大したりする恐れがあります。定期的なダクト清掃は、こうした問題を未然に防ぎ、換気システム全体の性能を維持するうえで非常に重要です。
ダクト清掃の計画では、ダクト材質や断面形状、粉じんの種類、堆積速度などを考慮して清掃周期を設定します。とくに粉じん発生量の多い掘進現場や破砕・積込エリアに近い区間は、堆積が早く進みやすいため、重点的なモニタリングが必要です。圧力測定結果や風量測定結果から、特定区間で異常な圧力降下が見られる場合、その区間のダクト内部で堆積や閉塞が進行している可能性が高くなります。現場の作業者から「風が弱くなった」「ダクトから粉じんが吹き戻る」といった声が上がった場合も、ダクト清掃を検討するサインとなります。
実際の清掃作業では、安全確保が最優先となります。送風機の停止やダンパ閉止による換気切り替えを適切に行い、対象区間への粉じん流入を抑えたうえで作業を実施します。清掃方法としては、手作業によるスクレーパーやブラシ、掃除機を用いた吸引、エアブローと集じん装置の組み合わせなどがあり、ダクト径やアクセス性に応じて最適な手段を選択します。高所に設置されたダクトや垂直立ち上がり部では、足場や昇降設備の安全確保に加え、落下防止対策や呼吸用保護具の着用が欠かせません。清掃後には、再度風量と圧力を測定し、効果を確認するとともに、作業記録を残して次回以降の計画に反映させます。
ダクト清掃を継続的に実施することで、鉱山用送風機の負荷を抑えつつ、安定した換気風量を確保できます。これは、省エネの観点からも大きなメリットがあります。ダクト内部の抵抗が小さくなれば、同じ風量をより低い全圧で賄うことができ、送風機の電力消費を削減できます。また、清掃により粉じんがダクト内で再飛散しにくくなり、作業場の粉じん濃度管理にもプラスに働きます。ダクト清掃は、一見地味な作業ではありますが、鉱山換気システムの性能と安全性、エネルギー効率を支える重要な要素であり、計画的かつ安全に実施することが求められます。