ダクト抵抗は、鉱山換気やトンネル換気における通風設計の基礎概念であり、換気ダクト内を風が流れる際に発生する圧力損失の総称です。送風機が供給する全圧のうち、多くの部分はダクトや坑道の抵抗を克服するために使われます。ダクト抵抗を正しく見積もらなければ、送風機の静圧が不足して計画風量が得られなかったり、逆に過大な送風機を選定してエネルギーを無駄に消費したりする原因になります。特に、布製柔軟ダクトや長距離鋼板ダクトを使用する鉱山現場では、ダクト抵抗の管理が換気計画と省エネの両面から重要になります。
ダクト抵抗は、大きく分けて摩擦損失と局部損失の二つから構成されます。摩擦損失は、ダクト内面と空気との摩擦によって生じる圧力損失であり、ダクト長さ・内径・流速・内面粗さ・空気密度などに依存します。細く長いダクトほど摩擦損失は増大し、風速が速くなるほど損失は大きくなります。一方、局部損失は、ダクトの曲がり・分岐・合流・縮小拡大・風門・ダンパ・フィルタなどの形状変化部で発生する損失です。鉱山の換気ダクト網では曲がりや分岐が多く、この局部損失が無視できない割合を占めることがあります。
ダクト抵抗を計算する際には、各区間ごとに摩擦損失と局部損失を評価し、それらを合計して全体の圧力損失を求めます。摩擦損失には一般にダルシー・ワイスバッハ式や経験式が用いられ、局部損失には曲がりや分岐ごとに設定された損失係数を使用します。これらの計算結果から、局所送風機や主扇に必要とされる全圧が導かれます。高圧換気が求められる深部鉱山や長距離トンネルでは、ダクト抵抗が送風機選定の決め手となることも多く、設計段階で慎重な検討が必要です。
実務では、ダクト抵抗の管理は設計時だけでなく運用中も重要です。ダクトのたるみや損傷、内部への粉じん堆積、フィルタや集じん装置の目詰まりなどにより、時間の経過とともに実際の抵抗は増加していきます。その結果、送風機の負荷が高まり、風量低下や電力消費増大を招きます。定期的な風量測定と静圧測定を行い、設計値との乖離を確認することで、ダクト抵抗の増加を早期に発見できます。必要に応じてダクトの張り直しや清掃、径の見直しを行うことで、ダクト抵抗を適正範囲に維持し、送風機の効率的な運転を確保することができます。