粉じん対策とは、鉱山、トンネル工事、冶金・セメント・ガラス・化学・繊維などの産業現場で発生する粉じんを抑制・捕集し、作業者の健康被害や設備の摩耗、周辺環境への影響、さらには粉じん爆発のリスクを低減するための総合的な施策を指します。鉱山においては、採炭切羽、掘進現場、破砕・積込み・運搬ラインなどあらゆる工程で粉じんが発生し、そのまま浮遊した状態が続くと、じん肺や呼吸器障害、視界不良による事故リスク、炭じん爆発の誘因など、多くの問題を引き起こします。粉じん対策は、鉱山用送風機による換気、集じん設備による粉じん捕集、水噴霧・散水による発じん抑制などを組み合わせた、通気・環境管理の中心的なテーマです。
鉱山での粉じん対策は、まず発じん源周辺での抑制を重視します。掘削や破砕、装載など粉じんが大量に生じるポイントでは、水噴霧や湿式スプレー集じん送風機を用いて、粉じんが空気中に浮遊する前に水分で包み込み、凝集・沈降させます。これにより、粉じんの一次発生を抑えつつ、後段の集じん設備への負荷を軽減できます。次に、局所集じんフードと集じん送風機を配置し、高濃度粉じんを含む空気を効率的に吸引します。吸引された空気は、サイクロンやバグフィルタ、湿式スクラバーなどの集じん装置で処理され、粉じんを除去したのちに坑内還風または坑外排気として利用されます。
粉じん対策の設計・運用において重要なのは、通気計画と集じん計画を連動させることです。主換気送風機による坑内全体の通気と、局所送風機や集じん送風機による局所換気・集じんをバランス良く組み合わせることで、必要な風量を確保しながら粉じん濃度を管理します。ダクト網の設計では、各フードに必要な風量が行き渡るよう圧力損失計算を行い、バランスダンパやバルブで微調整します。また、粉じんの粒径分布や爆発性の有無、湿度やガス成分などを踏まえ、湿式・乾式のどちらの集じん方式を採用するかを決定します。炭鉱のように爆発性粉じんのリスクが高い現場では、湿式集じんや水幕設備が重要な役割を果たします。
継続的な粉じん対策には、測定とフィードバックが欠かせません。坑内各所の粉じん濃度を定期的に測定し、法令基準や社内基準と比較しながら、必要に応じて送風機の風量調整や水噴霧量の増減、局所フードの位置変更などを行います。集じん設備については、フィルタ差圧の監視、スラッジ排出状況の確認、送風機の振動・騒音・電流値のモニタリングを実施し、予防保全を徹底します。さらに、作業員への粉じん対策教育や保護具の適切な使用指導も重要です。こうした技術的・管理的対策を総合的に進めることで、粉じん対策は鉱山の安全生産と環境保全を支える基盤となり、長期的な安定操業とグリーンマイニングの実現に貢献します。
