羽根車選定は、鉱山用送風機の性能と効率、騒音レベル、信頼性を決定づける中核的な設計プロセスです。軸流送風機や遠心送風機の羽根車は、風量と全圧を生み出す主要部品であり、その形状や寸法、枚数、ハブ比、取付角度などが送風機全体の特性に大きく影響します。鉱山換気では、坑道抵抗や必要風量、運転点の柔軟性、エネルギー消費、騒音規制など多くの条件を同時に満たす必要があり、羽根車選定は単なるカタログ選択ではなく、換気計画と密接に結びついた設計判断となります。
羽根車選定の第一歩は、必要風量と全圧、使用回転数をもとに、適切な直径とハブ比、羽根枚数の候補を決めることです。ハブ比が小さいほど有効通風面積が大きくなり大風量に適しますが、構造的な制約や強度、空力安定性も考慮する必要があります。羽根枚数は、風量と圧力、騒音のバランスに影響し、枚数が多いほど圧力は稼ぎやすくなりますが、摩擦損失や製造コストが増加します。鉱山用軸流送風機では、複数のハブ比・羽根枚数の組み合わせをラインアップし、換気条件に応じて最適な羽根車を選定できるようにするのが一般的です。
羽根形状と取付角度の選定も重要な要素です。翼型は、圧力係数と効率、失速特性、騒音などに影響し、鉱山用では広い運転範囲で安定した性能を発揮する翼型が求められます。取付角度(ピッチ角)を可変とした可変ピッチ羽根車を採用すれば、風量や圧力を運転中に調整でき、省エネ運転や逆風運転にも柔軟に対応できますが、構造の複雑化とコスト増を伴います。固定ピッチ羽根車の場合は、運転点が設計点から大きく外れないよう換気計画側との調整が重要です。
羽根車選定では、空力性能だけでなく、騒音と保守性も考慮しなければなりません。羽根枚数や翼端速度、ガイドベーンとの相互作用が騒音レベルに大きく影響するため、騒音基準の厳しい鉱山やトンネル現場では、低騒音型羽根車の採用が検討されます。また、粉じん付着によるアンバランスの影響を抑えるため、羽根表面形状や清掃のしやすさも重要な設計要件です。羽根車交換の容易さや、摩耗部材の取り替え方法など保守面の配慮も、長期運用を前提とした鉱山用送風機では欠かせません。羽根車選定は、単なる部品選びではなく、鉱山換気システム全体の性能と安全性、経済性を最適化するための総合的な設計プロセスなのです。