保守点検は、鉱山用送風機と換気設備の信頼性を長期にわたり維持するための基盤となる活動です。主扇や局所送風機は、坑内換気の要として24時間連続運転されることが多く、計画的な保守点検が行われないと、突発故障や性能低下による換気障害を招きかねません。保守点検では、日常点検、月次点検、定期停止点検など複数のレベルを設定し、それぞれの点検項目と判定基準を明確にすることで、誰が作業しても一定レベルの品質で点検が実施できる体制を整えることが重要です。
日常点検では、運転状態の目視確認と簡易な測定を中心に行います。具体的には、異常振動や異音、異臭の有無、軸受ハウジングや電動機の温度が異常に高くなっていないか、注油装置やグリース状態、漏油や油染みの有無などを確認します。また、電流計や計器盤の表示値をチェックし、通常運転時の基準値から逸脱していないかを見ます。これらのデータを運転日誌として記録しておくことで、後の傾向管理や故障トラブルシューティングに役立ちます。
月次点検や定期停止点検では、より詳細な保守作業を実施します。軸受のグリース補給・交換、カップリングやベルトの状態確認と張り調整、基礎ボルトやフランジボルトの締結状態確認、ケーシング内部や羽根車への粉じん付着状況の点検などが主な項目です。また、振動測定や騒音測定を行い、基準値と比較して異常傾向がないかを分析します。必要に応じて、羽根車のバランス調整やシール部品の交換、ガイドベーンやダンパの動作確認も行い、送風機としての基本性能が維持されているかを確認します。
保守点検の計画を立てる際には、設備の重要度や運転条件、過去の故障履歴を踏まえたリスクベースの考え方が有効です。鉱山用主扇のように停止許容度が低い設備には、予知保全やオンライン監視を組み合わせて、異常の兆候を早期に検出できるようにします。一方で、予備機がある局所送風機では、予備機との切り替えを利用した計画停止点検を行うことで、現場の換気を確保しながら効率的な保守が可能になります。保守点検を単なる「作業」としてではなく、長寿命運転と省エネ、安全性向上を実現するための「戦略」として位置づけることで、鉱山用送風機の価値を最大限に引き出すことができます。