潤滑技術は、鉱山用送風機の信頼性と寿命を左右する重要な要素です。主扇や局所送風機の軸受、カップリング、ギヤ機構には常に大きな荷重と回転力が作用しており、潤滑が不適切であれば摩耗の増大や焼付き故障、異常振動の発生につながります。鉱山換気設備は長時間連続運転が基本となるため、潤滑技術を正しく適用し、軸受温度やグリース状態を安定させることが、換気システム全体の安全運転と省エネルギー運転の土台となります。
潤滑技術においては、まず軸受構造と運転条件に合った潤滑方式の選定が重要です。中小容量の鉱山用送風機ではグリース潤滑が多く採用され、大容量主扇では循環潤滑や油浴潤滑が用いられます。回転数、荷重、周囲温度、粉じん環境などを考慮し、適切な基油粘度と耐熱性、耐酸化性を持つグリースや潤滑油を選定することが求められます。また、防爆構造の送風機では、潤滑剤が高温部に触れても危険な発火源とならないよう、各種規格に適合した潤滑剤の使用が必要です。潤滑技術は単なる油の選択ではなく、機械構造と安全要求を踏まえた総合的な設計判断となります。
運用段階では、潤滑管理の質が潤滑技術の成否を決定します。グリースの補給周期や補給量が不適切であれば、軸受内部での攪拌損失が増え、温度上昇や早期劣化を招きます。逆に量が少なすぎれば油膜切れが生じ、摩耗と振動の増大につながります。そのため、メーカーの推奨値を基準としつつ、実際の温度・振動データを見ながら補給間隔を調整する運用が理想的です。潤滑油を使用する場合は、定期的な油質分析を通じて、水分混入や粉じん混入、酸化劣化の程度を把握し、適切な交換時期を判断します。鉱山環境は粉じんや湿気が多いため、シール構造の点検や潤滑ポイント周辺の清掃も潤滑技術の一部として非常に重要です。
近年は、潤滑技術とモニタリング技術を組み合わせた保全手法も注目されています。軸受温度や振動レベルの継続的な監視により、潤滑不良に起因する異常を早期に検出し、計画停止でグリース交換や部品交換を行うことが可能になります。また、自動給脂装置や集中潤滑装置を導入すれば、人手による給脂ミスを減らし、過酷な場所での作業負荷も軽減できます。鉱山用送風機における潤滑技術は、単なる保守作業ではなく、設備の信頼性を高め、換気停止リスクやエネルギーロスを減らす戦略的な取り組みです。適切な潤滑設計ときめ細かな潤滑管理を組み合わせることで、安全で効率的な鉱山換気システムを長期にわたり維持することができます。
