化学工業用排ガス処理送風機は、化学プラントから排出されるガスに含まれる有害成分や臭気成分を除去するための排ガス処理設備と組み合わせて使用される専用送風機です。スクラバー、吸収塔、活性炭塔、触媒反応装置などの排ガス処理ユニットは、十分なガス流量と接触時間を確保することで所定の除去効率を発揮しますが、その中心的な役割を担うのが排ガス処理送風機です。化学工業における環境規制の強化に伴い、排ガス処理送風機の性能と信頼性は、工場の操業継続と社会的信頼の維持に直結する重要な要素となっています。
排ガス処理送風機の設計において特に重視されるのは、耐食性と安定運転性能です。処理対象となる排ガスには、酸性ガスやアルカリ性ガス、酸化性ガス、溶剤蒸気、微細粉じんなどが混在することが多く、送風機本体が腐食や摩耗の影響を強く受けます。そのため、材料としてはステンレス鋼や特殊合金、防食ライニングを施した炭素鋼などが採用されます。また、濡れガスを取り扱う場合には、ケーシング内部の排水性や結露対策も重要であり、ドレン口の配置やライニング材質の選定が耐久性に大きく影響します。ブレード形状や回転数は、効率だけでなく汚れの付着しにくさも考慮して決定されます。
化学工業用排ガス処理送風機の運用シーンは多様です。例えば、酸性ガスを洗浄するスクラバーラインでは、塔内の液ガス接触効率を確保するために、送風機が塔前後の圧力バランスを調整します。臭気ガス処理ラインでは、排気フードから集めた臭気ガスを安定した流量で脱臭装置に送り込み、周辺環境への臭気拡散を防止します。複数の排ガスラインをまとめる集合煙道では、総合風量と各ラインの圧力損失を考慮した上で排ガス処理送風機が選定され、工場全体の排気バランスを保つ役割を果たします。
安全性と省エネの観点からも、化学工業用排ガス処理送風機は高度な機能が求められます。爆発性ガスの可能性があるラインでは、防爆モーターや防爆構造の採用が検討され、異常時の自動停止やバイパス機構を組み合わせることでリスク低減が図られます。インバータ制御により、排ガス量の変動に応じた風量調整を行えば、処理装置の性能を維持しながらエネルギー消費を削減することができます。さらに、圧力・流量・温度・振動のオンライン監視を導入することで、装置の状態を常時把握し、計画的な保守やトラブルの早期対応が可能となります。鉱山換気で培われた耐久性と安全設計を基盤とする化学工業用排ガス処理送風機は、化学プラントの環境保全と安定操業を支える要となる送風ソリューションです。