化学鉱山用防爆送風機は、化学成分を多く含む鉱床や選鉱プロセスで酸性ガス・有毒ガス・可燃性ガスが発生する化学鉱山において、安全な換気を実現するために設計された防爆構造の送風機です。硫化鉱床や複雑鉱に由来する二酸化硫黄、硫化水素、酸性ミスト、さらには有機溶剤や可燃性ガスが混在する環境では、通常の送風機では腐食や爆発リスクが高まり、安全かつ安定した通気を維持することが困難になります。化学鉱山用防爆送風機は、防爆性能と耐腐食性を両立させ、主換気設備や局所排気設備として化学鉱山の安全運転を支える重要な換気装置です。
構造形式としては、軸流型と遠心型のいずれも採用されますが、ガスやミストを多く含んだ空気を搬送する用途では、遠心型防爆送風機が選ばれることも少なくありません。遠心型は、集じん装置や洗浄塔、吸収塔、スクラバなどの排ガス処理設備と組み合わせることで、高い静圧と安定した流量を提供しやすい特長があります。一方で坑道全体の換気や立坑を介した排気には、高風量を供給できる軸流型防爆送風機が適しています。いずれの形式においても、防爆電動機と防爆端子箱が採用され、ケーシングとフランジ、点検口は高い気密性と強度を備えた構造とされます。
化学鉱山用防爆送風機において特に重要となるのが耐腐食性です。硫黄成分や酸性ガスを含む空気は金属腐食を加速させるため、ケーシングや羽根車にステンレス鋼や耐食鋼を用いたり、エポキシ樹脂やフレークライニングなどの防食コーティングを施したりすることで耐久性を高めます。ガスの凝縮や酸性水の発生が予想される場合には、ドレン排出構造や防水シールを設けて内部の腐食を抑制します。また、軸受部やシール部には、腐食環境でも機能を維持できるグリースやシール材が選定され、長期連続運転に耐えうる設計とされています。
運用・保守においては、防爆構造と耐腐食性を維持するための定期的な点検と補修が欠かせません。外観点検では、ケーシングの塗膜剥離や腐食、フランジ部のガスケット劣化、ボルトの緩みなどを確認し、必要に応じて再塗装や部品交換を行います。内部点検では、羽根車の堆積物や腐食状況、軸受の摩耗、シール部の状態を確認し、バランス調整と部品交換を通じて性能低下や振動増加を防ぎます。さらに、通気測定およびガス濃度測定と組み合わせることで、化学鉱山用防爆送風機が通気計画どおりに機能しているかを検証し、安全性と環境保全の両面から設備運用の最適化を図ることができます。