隔爆形送風機は、防爆構造の中でも最も代表的な「隔爆構造」を採用した送風機であり、内部で発生した爆発をケーシング内に封じ込め、外部の爆発性雰囲気に引火させないよう設計されています。鉱山、化学プラント、粉体工場、溶剤を扱う塗装ブースなど、爆発性ガスや可燃性粉じんが存在する危険場所では、換気設備自体が潜在的な点火源となるため、隔爆形送風機の採用が安全設計の重要な柱となります。隔爆形送風機は、軸流型と遠心型のいずれにも適用され、主換気・局所換気・排気設備など、さまざまな用途で利用されています。
隔爆形送風機の基本原理は、強度の高いケーシングと適切な接合部構造により、内部で爆発が発生しても外部へ炎や高温ガスを伝播させないことにあります。ケーシングには規定の爆発圧に耐えられる厚さの鋼板が用いられ、フランジや点検口は、一定の間隙と長さを持つ接合面(フランジ隙間構造)とガスケットにより、炎の通過を阻止します。電動機についても隔爆形構造が採用され、巻線部や端子部は隔爆ケーシングに収容されます。ケーブル引き込み部には隔爆ケーブルグランドが使用され、全体として連続した隔爆容器を形成することで、安全性を高めています。
隔爆形送風機の設計では、防爆電気機器の規格に基づいた詳細な強度計算と寸法管理が行われます。羽根車とケーシングのクリアランスは、異物噛み込みによる火花発生を避け、回転中に接触が生じないよう慎重に設定されます。また、軸受やシール部には、温度上昇と摩耗を抑制する構造が採用され、長時間運転でも危険な高温部が生成されないよう配慮されます。腐食性雰囲気で使用する場合には、ケーシングやボルト、ガスケットの材質選定が防爆性能の維持に直結するため、耐食材や防食コーティングの採用が重要です。軸流型・遠心型いずれにおいても、通気性能と防爆性能を両立させることが、隔爆形送風機の設計における大きなテーマとなります。
運用・保守の面では、隔爆形送風機は通常の送風機以上に厳格な管理が求められます。分解・点検時には、防爆構造を損なわないよう、指定トルクでボルトを締結し、純正ガスケットと部品を使用することが基本です。無断加工や部品の削り取りは厳禁であり、フランジ面の損傷や腐食が見られる場合には適切な補修または部品交換を行う必要があります。運転中は、振動・騒音・電流値・温度などの監視を通じて異常兆候を早期に検知し、必要に応じて停止・点検を実施します。隔爆形送風機は、このような適切な設計と継続的な保守管理によって、危険場所における換気安全を長期にわたり支えることができる防爆送風機です。