換気設計は、鉱山やトンネル、地下工事現場の安全と生産性を支える中核技術です。鉱山では、メタンや一酸化炭素などの有害ガス、粉じん、爆薬の煙、機械類からの排熱や排気ガスが発生し、それらを許容限度以下に抑えるために十分な換気が必要です。換気設計では、まず各作業区域や主要坑道に必要な風量を算出し、その風量を鉱山全体にどのように配分するかを検討します。これに基づいて、主扇・局扇・補助扇の容量と配置、換気ダクト網、立坑・斜坑・坑道の役割分担を決めていきます。
換気設計の第一歩は、法規や安全基準に基づく必要風量の算定です。採炭区や採掘区、掘進切羽などでは、ガス発生量、使用爆薬量、作業者数、使用機械の種類などを考慮して、最低限必要な風量を求めます。そのうえで、坑道断面や温湿度条件も踏まえ、実際に供給すべき風量に安全余裕を加味します。全体としては、主扇が供給する総風量と、各分岐で必要とされる風量のバランスをとりながら通風網を構成します。トンネルや地下発電所などの換気設計でも、この基本的な考え方は共通です。
次に、換気設計では通風網の圧力損失計算が重要なステップとなります。各坑道やダクトの長さ・断面積・粗さ係数・曲がり・分岐・風門などの抵抗要素を整理し、通風抵抗を計算します。これらをネットワークとして解析し、各枝に流れる風量と圧力分布を求めることで、主扇および局扇が必要とする全圧を決定します。高圧換気が必要な深部鉱山や長距離トンネルでは、対向回転軸流送風機や多段遠心送風機など、高静圧型の送風機が採用されます。換気設計の段階で適切な送風機形式と容量を選定することが、後の省エネ運転と安定換気につながります。
近年の換気設計では、省エネルギーと自動制御の観点も重要になっています。インバータ送風機を組み込んだ換気システムでは、ガス濃度・温度・作業状況に応じて風量を自動調整し、必要最小限の電力で安全基準を満たすことが求められます。また、CFD解析や換気シミュレーションを活用して、複雑な坑道形状における風の流れやよどみ、局所的な高温・高濃度領域を予測し、設計段階から改善策を検討することも増えています。換気設計は、送風機選定・ダクト計画・風門配置・監視制御システム設計を含む総合的なエンジニアリングであり、鉱山換気の安全性と経済性を両立させるうえで欠かせないプロセスです。