カスタム遠心送風機は、鉱山や冶金、化学工業、建材工場、エネルギー関連設備など、それぞれのプロセスに固有の条件に合わせて設計・製作される特注型の遠心送風機です。標準モデルでは対応できない風量や静圧、ガス温度、粉じん濃度、腐食性の強さ、設置スペースなどの要求に対し、カスタム遠心送風機は仕様を一つ一つ最適化することで、高い信頼性と通風性能を提供します。鉱山分野では、鉱石破砕ラインや選鉱設備、粉じん集じんシステム、高圧排ガスラインなどで特殊条件が発生することが多く、カスタム遠心送風機が重要な選択肢となります。
カスタム遠心送風機の設計プロセスでは、まずユーザーが必要とする風量と全圧、ガス温度、粉じんや腐食成分の有無、騒音規制、設置環境などを詳細にヒアリングします。そのうえで、羽根車の形式(後ろ向き羽根、前向き羽根、ラジアルブレードなど)やケーシング形状、材質、駆動方式、シール構造を選定し、性能計算や構造解析を行います。耐摩耗性が求められる鉱山用では、羽根車とケーシングに耐摩耗鋼やライナーを使用し、含じんガスの流れを滑らかにする流路設計を採用します。腐食性ガスを扱う化学プロセスでは、耐食鋼やライニング、防食塗装を組み合わせ、長期運転に耐えうる仕様とします。
さらに、カスタム遠心送風機では、設置スペースや搬入経路、既存設備との取り合いを考慮した構造設計が重要です。狭い機械室や坑内設備に設置する場合には、分割構造やコンパクトレイアウトを採用し、搬入と据付を容易にします。上位システムとの制御連携も重視され、インバータによる回転数制御や、圧力・流量・温度信号を用いた自動制御に対応した設計とすることで、プロセスの変動に応じた柔軟な運転が可能になります。省エネの観点からは、運転点に最も近い効率の高い設計を行うことで、長期にわたるエネルギーコストを大幅に削減できます。
運用・保守の面では、カスタム遠心送風機は用途に特化しているからこそ、適切な保守計画と技術サポートが重要です。納入時には試運転と性能確認を行い、振動や温度、音圧レベルを含めた基準値を設定します。運転開始後は、軸受・シール・羽根車・ケーシングの状態を定期的に点検し、状態監視システムを用いて異常兆候を早期に把握することで、計画停止時に効率的なメンテナンスを実施できます。ユーザーのプロセス条件に合わせて設計されたカスタム遠心送風機は、鉱山や重工業分野において、標準品では得られない通風性能と信頼性を提供し、生産設備の中核として長期にわたり活躍します。