カスタム換気送風機は、標準仕様の換気送風機だけでは解決できない現場の課題に対して、一件ごとに仕様を最適化して設計される特注タイプの換気送風機です。鉱山やトンネル、地下空間、冶金・化学プラントなどでは、通気経路の制約、粉じんや有害ガスの種類、高温・高湿度、騒音規制など、現場ごとに異なる条件が複雑に重なります。カスタム換気送風機は、これらの条件を詳細に整理・分析したうえで、軸流型・遠心型・対向回転型などの構造、ケーシング寸法、材質、駆動方式を組み合わせ、最も効率よく安全な換気が行えるよう設計されます。
鉱山分野におけるカスタム換気送風機では、防爆性能やガス管理、安全規格への適合が特に重要なポイントとなります。ガス突出の可能性がある坑道や、可燃性粉じんが多い採掘現場では、防爆電動機や防爆制御盤との組み合わせ、防爆構造の羽根車・ケーシングが必要です。また、深部採掘や高温区域では、高温ガスへの耐性を持つ材質や軸受冷却構造を採用することで、過酷な温度条件の下でも長時間安定運転を実現できます。排水処理設備や浸出工程では、腐食性ガスに対応した耐食仕様のカスタム換気送風機が要求され、ステンレスや特殊コーティングを用いることで、腐食による早期劣化を防ぎます。
カスタム換気送風機の設計プロセスでは、まず必要風量・全圧だけでなく、通気網全体の圧力バランスや将来の通気計画も含めて検討します。鉱山では、採掘ステージの進行に伴い換気パターンが変化するため、余裕のある容量設定やインバータ制御範囲を確保し、長期的に柔軟な運転が行えるよう配慮することが大切です。さらに、換気ダクトや坑道断面、立坑・斜坑との接続条件を考慮して据付寸法や搬入方法を決めることで、施工時のリスクとコストを抑えられます。必要に応じて、逆転運転や予備機との切り替え機能、遠隔監視システムとの連携もカスタム仕様として盛り込むことができます。
導入後の運用では、カスタム換気送風機の性能を長期に維持するため、振動・温度・電流値など運転データの継続的な記録と分析が有効です。予防保全計画をあらかじめ立て、軸受やシール部、羽根車の点検・清掃・部品交換を計画的に実施することで、突発的な停止を防ぎ、鉱山やトンネル工事の進行に影響を与えない安定運転を確保できます。現場条件に合わせて設計されたカスタム換気送風機は、安全性・省エネ性・信頼性を高いレベルで両立させる、鉱山換気システムの中核機器として大きな価値を発揮します。