金属精錬用送風機は、銅・亜鉛・鉛・ニッケル・金などの非鉄金属および貴金属の精錬プロセスで用いられる精錬炉や反応炉、ボイラ、熱風炉、排ガス処理設備に対して、必要な空気・ガスを供給するための産業用送風機です。鉱山で採掘された鉱石は、破砕・選鉱を経て精錬工場に送られ、焙焼・溶錬・転炉・精製といった複数の工程で金属が回収されます。その各段階で、酸化反応の促進、燃焼制御、排ガス搬送などの目的で、信頼性の高い送風機が不可欠です。金属精錬用送風機は、鉱山用送風機の設計技術を基盤としながら、より高温・高腐食・高粉じん環境に対応できる仕様が求められます。
金属精錬用送風機には、精錬炉への酸化空気を供給する高圧送風機、焙焼設備や乾燥炉への燃焼空気を供給する送風機、排ガスをサイクロン・バグフィルタ・湿式スクラバーへ搬送する集じん送風機など、さまざまなタイプがあります。精錬炉用では、酸素濃度や風量のわずかな変動が反応温度や金属回収率に影響するため、性能曲線と制御性に優れた送風機が求められます。排ガス用では、高温・腐食性・含じんガスを扱うため、耐熱鋼や耐食ライニングを備えた遠心送風機が多く採用されます。これらの送風機は、高温状態での連続運転と頻繁な負荷変動に耐えうる堅牢な構造が必要です。
構造設計においては、金属精錬用送風機は羽根車とケーシングの強度はもちろん、ガス組成や温度に応じた材質選定が重要となります。硫黄化合物や酸性成分を含む排ガスに対応するため、耐食性の高いライニング材やステンレスが使用されることも多く、内部の摩耗や腐食を抑制することで長寿命化を図ります。高温ガスを扱う場合には、軸受を冷却ゾーンに配置したり、冷却風路を設けたりするなど、熱の影響を低減する設計が採用されます。また、バランスの取れた羽根車形状と精密な動バランス調整により、高回転でも低振動・低騒音を維持できる点も重要です。
保守・運用の側面では、金属精錬用送風機は振動監視や軸受温度監視、電流監視などを通じて状態監視が行われ、異常兆候の早期検知が求められます。インバータ制御を活用すれば、精錬炉の操業状態に応じて風量を細かく調整でき、安定した炉内温度と反応条件の維持に貢献します。また、定期的な内部清掃と羽根車の点検により、付着物や摩耗による性能低下を防止できます。金属精錬用送風機は、鉱山から精錬に至る一連のプロセスをつなぐ重要な設備であり、適切な選定と管理によって精錬コスト削減と環境負荷低減の両立を実現します。