コスト回収は、鉱山用送風機や換気設備に対する投資判断を行う際の重要な指標であり、導入した高効率機器がどの程度の期間で元を取れるかを定量的に評価する考え方です。従来型の送風機から高効率型インバータ送風機や可変ピッチ軸流送風機へ更新する場合、購入費や据付工事費といった初期投資だけでなく、電力料金・保守費・停止リスクなど運転中に発生するコスト全体を比較し、その差額によって投資を何年で回収できるかを検討します。鉱山では主扇・局扇の電力消費が全使用電力の大きな割合を占めるため、送風機の省エネ化はコスト回収効果が非常に高い分野といえます。
コスト回収を考えるうえで、まず把握すべきなのは現行システムの電力使用量と運転時間です。主扇・局扇・補助扇ごとの電力計測値やインバータのログから年間消費電力量を求め、電力単価を掛け合わせることで年間電力コストを算出します。そのうえで、高効率送風機への更新後に期待される省エネ率を適用し、新旧の電力コスト差額を見積もります。この差額が年間の「節約額」となり、初期投資額を節約額で割った値がおおよそのコスト回収期間となります。鉱山用送風機では、運転時間が長いほど省エネ効果が大きくなり、回収期間が短縮される傾向があります。
コスト回収の検討では、電力コストだけでなく保守費用や設備寿命も重要な要素です。高効率送風機は、流体設計の改善による低振動・低騒音化や軸受負荷の低減により、トラブルが少なく長寿命で運転できる場合が多く、修理費や交換費を含めたライフサイクルコストを下げることができます。また、インバータ送風機を導入すればソフトスタートによって起動電流や機械的衝撃が抑制され、電動機や駆動部の故障リスクも軽減されます。こうした間接的な効果も、コスト回収の観点から評価すべき重要なポイントです。
さらに、コスト回収の検討には安全性と操業安定性の向上も含めて考える必要があります。換気能力に余裕が生まれることでガス・粉じん・温度の管理が改善され、作業環境が向上すれば、事故リスクの低減や作業効率の向上といった形で経済的メリットが現れます。近年では、送風機の運転データを蓄積し、エネルギー管理システムで見える化することで、省エネ改善とコスト回収を継続的に評価する取り組みが広がっています。鉱山用送風機におけるコスト回収は、単なる初期投資の回収にとどまらず、安全・省エネ・安定操業を同時に達成するための戦略的な指標といえます。
