坑内換気は、地下鉱山やトンネルなどの坑道内で作業者の安全と快適な作業環境を確保するために、新鮮な空気を供給し、有害ガスや粉じん、熱を排出する通風システムです。採掘現場では、爆破や機械運転に伴い粉じんや排気ガスが発生し、岩盤からはメタンなどの可燃性ガスが湧出することがあります。これらを適切に希釈・排出するためには、坑内換気システムが常に十分な風量と適切な風向を維持していることが不可欠です。坑内換気は、鉱山安全の基礎であり、換気が不十分な状態での作業は重大災害につながるおそれがあるため、各国の法令やガイドラインで必要風量や換気基準が定められています。
坑内換気システムは、一般に主換気と局所換気の組み合わせで構成されます。主換気は、坑口付近に設置された大形軸流主換気送風機または対向回転軸流送風機によって坑内全体の基本的な風の流れをつくり、新鮮な空気を地下深部まで送り込みます。一方、局所換気は、作業切羽や掘進現場、積込場など特定の区画に軸流局所送風機や局所扇を設置し、必要風量を集中的に供給する仕組みです。ダクトや風管を組み合わせることで、風を必要な場所に確実に届けるとともに、不要な区画への過剰な風量を避けます。坑内換気設計では、主換気と局所換気の役割分担を明確にし、通風網全体の圧力バランスを保つことが重要です。
坑内換気の主な目的は、ガス希釈、粉じん対策、温度・湿度管理の三つに大別されます。メタンなどの可燃性ガスは、規定濃度を超えると爆発の危険性が高まるため、換気によって常に安全濃度以下に保つ必要があります。粉じんについては、作業者の健康被害や視界不良を防ぐために、集じん送風機や湿式スプレー集じん装置と組み合わせた換気対策が求められます。また、深部採掘が進むと地熱や機械排熱によって坑内温度が上昇しやすくなるため、冷却設備と換気を連携させて温度・湿度を管理することも重要です。これらの目的を達成するために、坑内換気では風量分配と圧力損失の管理が継続的に行われます。
坑内換気を適切に維持するためには、定期的な風量測定やガス濃度測定、換気システムの点検が欠かせません。通風網の一部が崩落や工事変更で変化した場合、風向や風量分布が予期せず変わることがあり、危険エリアが発生するおそれがあります。そのため、通風計算やシミュレーションを活用して、換気計画を随時見直すことが推奨されます。また、省エネの観点からは、インバータ制御や可変ピッチ軸流送風機を用いて、必要風量に応じた効率的な運転を行うことが重要です。坑内換気は、鉱山安全と生産性を支える中核システムであり、送風機の性能だけでなく、通風網設計や運転管理を含めた総合的な視点で構築・維持されるべきです。