高温シールは、高温ガスや熱風を扱う鉱山用送風機において、軸周りや点検口、フランジ部からのガス漏れを防止するために不可欠な要素です。ガラス工場の窯炉排ガス、冶金炉からの高温煙道ガス、ボイラ排ガスなど、高温かつ腐食性成分を含むガスを輸送・換気する送風機では、シール部が劣化すると外部への漏洩や冷外気の侵入を招き、性能低下や安全上の問題を引き起こします。高温シールは、こうした厳しい条件下でも長期間にわたり機能を維持し、高温送風機の安定運転を支える重要な技術です。
高温シールに用いられる方式には、パッキン式、メカニカルシール式、ラビリンスシール式などがあります。パッキン式では、耐熱繊維や膨張黒鉛などを用いたパッキンをグランド部に充填し、軸との隙間を塞いで漏れを抑えます。メカニカルシール式は、摩擦面を持つシールリング同士を密着させてシールする方式で、高温高圧条件でも安定した密封性能を発揮します。ラビリンスシールは、軸周りに迷路状の溝を設け、ガスが通過する際の圧力損失を利用して漏洩量を低減する構造であり、非接触で摩耗が少ない点が特長です。鉱山用高温送風機では、温度・圧力・ガス成分に応じてこれらの方式を組み合わせ、安全性と信頼性を高めます。
高温シール材質の選定も重要なポイントです。シールリングやパッキンには、耐熱鋼、セラミック、膨張黒鉛、耐熱繊維などが用いられ、使用温度やガス成分、潤滑条件に合わせて適切な材質が選ばれます。腐食性ガスを扱う場合には、耐食性の高い合金やコーティングを施した材料が必要となり、シール面への付着や腐食による密封性能低下を防ぐ工夫が求められます。また、熱膨張差によるクリアランス変化を考慮し、運転時温度で適切なシール状態となるような寸法設計が必要です。高温シールは、単に高温に耐えるだけでなく、温度変化に伴う機械的な変形にも追従できる柔軟さが求められます。
保守・運用の面では、高温シールの状態監視と定期交換が高温送風機の信頼性確保に直結します。シール部からの漏れ量が増加すると、周辺温度の上昇やガス検知器の反応として現れることがあるため、運転データや現場点検を通じて早期の異常検知を行います。高温シールの交換作業では、シール面の清掃や軸の状態確認、組立時のクリアランス管理が重要であり、メーカー推奨の手順に従った施工が必要です。高温シール技術を適切に活用し、計画的な保守を行うことで、鉱山用高温送風機は過酷な温度条件下でも安定して運転を続けることができ、安全で効率的な換気・排ガス処理を支えることが可能となります。