モジュール式送風機は、ケーシング、羽根車、軸受ユニット、駆動部、消音部などを標準化されたモジュールとして構成し、用途に応じて組み合わせることができる送風機です。鉱山や大型産業プラントの換気設備では、立坑や坑道のスペース制約、搬入経路の制限、将来的な能力増強など、設計段階では読み切れない条件が数多く存在します。モジュール式送風機は、こうした課題に対して分割搬入と段階的な拡張を可能にし、通気システム全体の柔軟性と経済性を高めることを目的として設計された換気機器です。
モジュール構造の最大の利点は、輸送と据付の自由度が高いことです。大風量・高静圧が必要な鉱山用送風機は外形寸法も大きくなりがちですが、モジュール式送風機であれば、ケーシングやフレームを分割して坑口付近まで運び、現地で組み立てることができます。立坑ケージや斜坑運搬設備のサイズ制約が厳しい炭鉱でも、モジュール単位で分割輸送することで、必要な能力を持つ送風機を無理なく導入できます。また、据付後に通気計画が変更された場合でも、モジュールの追加や交換によって性能を段階的に引き上げることができ、設備投資の平準化にもつながります。
通気性能の面では、モジュール式送風機であっても、鉱山換気に必要な風量・静圧・効率を十分に満たすよう設計されています。羽根車の直径やピッチ、段数、ガイドベーンの有無などはモジュール構成と連動して選択され、要求性能に合わせた最適な組み合わせが可能です。ケーシング内の流路形状も、モジュール接続部で乱流や損失が発生しにくいよう工夫されており、通気計算で求められた運転点付近で高効率な運転が行えるよう配慮されています。主扇として使用する場合は、モジュール追加による将来の能力増強を見越した設計とし、局所用として使用する場合は、コンパクトさと設置の自由度を重視した構成とすることが一般的です。
保守・運用の観点でも、モジュール式送風機は大きなメリットを持ちます。軸受ユニットやシール部、消音器など、故障や摩耗が発生しやすい部分は交換可能なモジュールとして設計されており、現場での交換作業時間を短縮できます。予備モジュールを準備しておけば、計画停止中に迅速な入れ替えが可能で、鉱山生産への影響を最小限に抑えることができます。さらに、通気システム全体の更新・増設時には、既存モジュールを活かしながら一部のみを更新するといった段階的な改造も行いやすくなります。モジュール式送風機は、鉱山換気設備のライフサイクル全体を通じて、柔軟性とメンテナンス性を高いレベルで両立させる送風機として位置づけられます。