採鉱工学は、鉱床の探査から開発、採掘、運搬、換気、安全管理、閉山に至るまで、鉱山のライフサイクル全体を対象とする工学分野です。その中で鉱山換気は、作業員の安全と健康、設備の安定運転、生産性の確保に直結する重要なテーマであり、採鉱工学の中核領域のひとつとされています。採鉱工学の教育・研究では、鉱床の形状や地質条件、採掘方式と並んで、主換気送風機・局所送風機・立坑・斜坑・通気坑道などで構成される換気システムの設計と運用が詳しく扱われます。適切な送風機の選定と通風網設計は、採鉱工学における通気分野の基礎となります。
採鉱工学では、まず鉱山全体の採掘計画と生産計画を立案し、それに基づいて換気計画を策定します。坑内におけるガス発生量、粉じん発生源、熱源、作業員配置、機械設備の配置などを総合的に評価し、必要風量と必要静圧を算出します。その結果に基づき、主換気軸流送風機や対向回転軸流送風機の容量や設置位置を決定し、局所軸流送風機や集じん送風機をどの切羽に配置するかを計画します。採鉱工学における通風設計では、単に風を送り込むだけでなく、通気経路を合理的に構成して風量を効率よく配分し、危険ガスや粉じんを安全濃度以下に保つことが求められます。
さらに、採鉱工学では、通風網の解析や換気シミュレーションも重要な役割を担います。ネットワーク理論に基づく通風計算や、数値流体解析による風量・静圧分布の予測によって、送風機容量の妥当性やダクト・風門の配置、圧力損失のバランスを検討します。高温環境や深部採掘では、冷却設備や地中熱ヒートポンプと送風機を組み合わせた換気冷却システムの設計も採鉱工学の範疇に含まれます。また、インバータ制御や可変ピッチ機構を用いた省エネ換気、オンライン監視による安全性向上など、最新の送風機技術を通風計画に統合することも重視されています。
採鉱工学の視点から見ると、鉱山用送風機は単なる機械設備ではなく、鉱山システム全体を成立させるための不可欠な要素です。主換気送風機や局所送風機が適切に設計・運転されていなければ、どれほど優れた採掘技術を用いても、安全で効率的な生産は実現できません。そのため、採鉱工学では、送風機選定・換気計画・安全規制・省エネのバランスを取りながら、最適な鉱山換気システムを構築することが求められます。鉱山用送風機メーカーと採鉱工学の専門家が協力することで、より安全で経済的な鉱山運営が可能となります。