産業向け省エネは、鉱山やトンネル、工場などの産業現場で使用される送風機や換気システムの電力消費を抑え、運転コストと環境負荷を低減する取り組みです。特に鉱山換気では、主換気送風機や局所送風機が長時間連続運転しており、換気設備の電力使用量が全体エネルギーコストの大きな割合を占めています。産業向け省エネ対策では、高効率送風機の採用やインバータ制御の導入、通風網の最適化、運転パターンの見直しなどを組み合わせることで、安全に必要な換気性能を維持しながら、無駄なエネルギーを削減することを目指します。
産業用送風機に対する省エネの基本は、高効率機種への更新です。羽根車の形状や流路設計を最適化した高効率送風機は、従来機と同じ風量・静圧をより少ない動力で実現できるため、設備更新時に導入することで長期的な電力コスト削減が期待できます。鉱山用主換気送風機や高圧遠心送風機では、大容量の電動機が使われるため、効率数パーセントの改善でも年間電力費に大きな差が生じます。また、局所送風機や集じん送風機を高効率仕様に切り替えることで、坑内や工場内の多数の換気ポイントで着実な省エネ効果を積み上げることができます。
制御面では、インバータ制御を中心とした省エネ技術が重要です。インバータを用いて送風機の回転数を調整することで、必要風量に応じた運転が可能となり、過剰な風量供給によるエネルギー浪費を防ぎます。送風機の動力は回転数の三乗に比例するため、少し回転数を低下させるだけでも大きな電力削減効果が得られます。鉱山や工場では、稼働シフトや生産負荷が時間帯によって変動するため、換気負荷に合わせて回転数を自動調整する制御ロジックを導入することで、常に最適なエネルギー使用状態を保つことができます。さらに、局所換気系統では、作業終了後の自動停止や段階的な風量制御により、不要な運転時間を削減できます。
産業向け省エネを効果的に進めるには、通風網や換気設備全体を俯瞰したエネルギー管理が不可欠です。ダクト径やレイアウト、バランスバルブの設定が適切でない場合、送風機側だけを高効率化しても期待通りの省エネ効果が得られないことがあります。そのため、通風計算や現場測定を通じて圧力損失の大きい区間を特定し、ダクト改造やバルブ調整によってシステム全体の抵抗を減らすことが重要です。また、エネルギー監視システムを用いて送風機ごとの電力使用量や風量を把握し、対策前後のデータを比較することで、省エネ施策の効果を定量的に評価できます。産業向け省エネは、鉱山や工場の運転コストを継続的に削減すると同時に、温室効果ガス排出削減にも貢献する取り組みとして、今後ますます重視されていきます。