診断フローは、鉱山用送風機で異常や故障が発生した際に、効率よく原因を特定し、適切な対策を講じるための体系的な手順です。送風機のトラブルは、振動増大・異音・風量低下・温度上昇・電流異常・起動不能など、さまざまな症状として現れます。現場でこれらの症状を見たとき、経験だけに頼って対応すると、原因の取り違えや無駄な部品交換が発生し、停止時間とコストが増大するおそれがあります。診断フローを事前に整備しておくことで、症状に応じたチェック項目を順番に確認し、論理的かつ再現性のある故障診断が可能になります。
送風機診断フローの基本構成は、「症状の確認→安全確保→外観点検→運転データ確認→詳細点検→原因特定→対策実施」です。まず、異常音や振動がある場合は、直ちに安全を優先し、必要に応じて停止または負荷低減を行います。そのうえで、ダクトの倒れや異物混入、風門の開度、吸込・吐出の閉塞など、外観で確認できる事項をチェックします。次に、振動値・軸受温度・電動機電流・端子電圧などの運転データを確認し、いつから異常が始まったのか、負荷条件との関連があるかを分析します。
外観点検と運転データで原因が絞り込めない場合には、詳細点検に進みます。羽根車のバランス状態やクラックの有無、軸受のガタや潤滑状態、カップリングの芯出し、電動機絶縁抵抗などを順次確認します。診断フローでは、例えば「振動が大きい場合→アンバランス→羽根車付着物・変形の有無→問題なしなら軸受・基礎・ボルト緩みを確認」といったように、分岐を設けながら段階的に原因候補を絞り込んでいきます。この手順を文書化し、図解したフローチャートとして現場に配布することで、担当者の経験に依存しない標準化されたトラブルシューティングが実現します。
診断フローは、故障対応だけでなく予防保全にも活用できます。定期点検時に診断フローの一部を適用し、軽微な異常や傾向変化を早期に把握することで、計画停止時に集中的な整備を行い、突発的な停止を防ぐことができます。また、実際のトラブル事例を反映して診断フローを定期的に更新すれば、現場の知見が蓄積され、送風機全体の信頼性向上につながります。鉱山用送風機における診断フローは、安全で効率的な換気システム運用を支える技術的なロードマップであり、保守チームにとっての共通言語として機能します。
