昇圧原理は、鉱山用送風機がどのようにして空気の圧力を高め、坑道全体に換気風を送り出しているかを理解するための基本概念です。送風機は、電動機から羽根車へ伝達された回転エネルギーを空気に与え、空気流の速度と圧力を増加させます。このとき生じるエネルギーの増分が全圧として表され、ダクトや坑道の摩擦抵抗、局部損失、曲がり部の損失などを克服しながら、必要な風量を鉱山内の各作業場へ届けます。昇圧原理を正しく理解することは、換気計画や送風機選定、ダクト設計における性能計算の前提となります。
遠心送風機の昇圧原理では、羽根車の回転によって空気が半径方向へ加速され、遠心力により高い速度エネルギーが与えられます。その後、ケーシング内部のディフューザ部で流速を徐々に減速させることで、速度エネルギーが静圧へ変換され、高い全圧を得ることができます。一方、軸流送風機では、羽根車が翼型のように機能し、空気に揚力を与えることで圧力を上昇させます。軸方向に流れを保ちながら、入口ガイドベーンや出口ガイドベーンで流れ方向を整え、旋回損失を低減することで効率的な昇圧を実現します。
鉱山換気の設計では、昇圧原理に基づいて、必要風量と必要全圧を明確にすることが重要です。坑道の長さ、断面形状、ライニング構造、風門やダンパの数、集じん機やフィルタの有無などから総合的な圧力損失を計算し、それを上回る全圧を発生できる送風機を選定します。また、実際の運転では、ダクトの増設や採掘範囲の拡大により圧力損失が変化するため、一定の昇圧余裕を見込んだ設計が望まれます。昇圧原理を理解すれば、送風機の性能曲線と系統抵抗曲線の交点から運転点を読み取り、最適な運転条件を検討することも容易になります。
昇圧原理は、省エネや運転安定性の検討にも役立ちます。インバータ制御によって回転数を変化させると、風量と圧力は相似則に従って変動し、回転数の低下により全圧も減少します。この関係を把握しておけば、必要以上に高い圧力を出してダンパ絞りで調整するのではなく、適正な昇圧レベルで運転することができます。さらに、羽根車形状やガイドベーン、ダクトレイアウトの改善によって損失を減らせば、同じ昇圧でもより少ない電力で換気が可能になります。鉱山用送風機の昇圧原理を正しく理解し、設計・運用に反映することで、安全で効率的な坑内換気システムを構築できます。