省エネ・安全は、鉱山換気システムを設計・運用するうえで常に意識すべき重要なキーワードです。地下鉱山では、主換気送風機や局所送風機が24時間連続運転されることが多く、換気用電力は鉱山全体のエネルギー消費の大きな割合を占めています。一方で、安全面では、メタンなどの可燃性ガスや粉じん、熱ストレスへの対策として、必要風量を確保し、換気安全基準を満たすことが絶対条件となります。省エネ・安全の考え方は、高効率送風機やインバータ制御を活用しながらも、安全余裕を確保した運転を行い、エネルギー削減とリスク低減を同時に実現することを目指すものです。
省エネ・安全を進める第一歩は、送風機自体の効率を高めることです。高効率軸流送風機や対向回転軸流送風機、高圧遠心送風機など、鉱山用に最適化された羽根車形状やガイドベーンを採用することで、同じ風量・静圧をより少ない電力で達成できます。また、防爆構造や隔爆形モーターを備えた送風機を選定することで、爆発性雰囲気においても高い安全性を確保できます。送風機の効率向上と安全仕様は相反するものではなく、適切な設計と製造により、省エネ・安全を両立させることが可能です。
次に重要となるのが、インバータ制御などを用いた運転最適化です。従来は、送風機を定格回転数で運転し、風門の開度で風量を調整するケースが多く見られましたが、この方法では大きなエネルギーロスが生じます。インバータ制御を導入して回転数制御を行えば、必要風量に応じた最適な回転数で運転でき、電力消費を大幅に削減できます。同時に、換気安全を損なわないよう、最低必要風量やガス濃度監視と連携し、設定値を下回らないよう制御ロジックを構築することが重要です。これにより、省エネ運転中でも安全基準を確実に満たすことができます。
さらに、省エネ・安全を長期的に維持するためには、スマート監視や定期点検による状態管理が欠かせません。送風機の振動・温度・電流・風量・静圧などをオンラインで監視し、異常兆候を早期に検知することで、計画的なメンテナンスや部品交換が可能となり、突発的な停止による換気リスクを低減できます。また、実測データに基づいて換気計画やインバータ設定を見直し、過剰換気を抑えつつ安全余裕を確保した運転条件を継続的に最適化することも重要です。省エネ・安全は、一度達成して終わりではなく、送風機技術・運転データ・安全基準を組み合わせて継続的に改善していくプロセスであり、鉱山用換気設備の価値を最大限に引き出すための基本方針といえます。