集じん設備は、粉じんを含む空気を吸引してフィルタ、サイクロン、湿式スクラバーなどの集じん装置で粉じんを分離・回収し、清浄な空気として排出することを目的としたシステムです。鉱山、金属精錬工場、セメント工場、ガラス工場、化学プラント、繊維工場など、多くの産業分野で粉じんの発生は避けられず、そのまま放置すると作業者の健康被害、設備の摩耗、環境汚染、さらには粉じん爆発の危険性を高める要因となります。集じん設備は、こうしたリスクを低減し、安全で清浄な作業環境と周辺環境を実現するための重要な環境対策設備です。
集じん設備は、一般的に送風機、集じん装置、ダクトネットワーク、排気・還気設備、制御システムなどから構成されます。送風機は、粉じんを含む空気を安定して吸引し、適切な圧力・風量で集じん装置へ供給する役割を担います。集じん装置には、粗じんの分離に適したサイクロン、微細粉じんを高効率で捕集するバグフィルタ(布フィルタ)、水を利用して粉じんを捕集する湿式スクラバーなどがあり、対象とする粉じんの粒径や濃度、爆発性の有無などに応じて組み合わせが決定されます。ダクトネットワークは、粉じん発生源に設けたフードから集じん装置まで空気を搬送する通路であり、圧力損失とバランスを考慮して設計されます。
鉱山分野においては、集じん設備は坑内粉じん対策の中心的な役割を果たします。破砕設備や積込みポイント、コンベヤ受け渡し部、掘進切羽周辺など粉じんが集中的に発生する箇所には局所フードが設置され、集じん送風機によって粉じんを含む空気が吸引されます。その後、集じん装置で粉じんが回収され、清浄な空気が排気または還風されます。湿式集じん設備は粉じん爆発のリスクがある炭鉱などで特に有効であり、乾式設備は回収粉じんを再利用できることから資源循環の観点でもメリットがあります。集じん設備の設計においては、通気システム全体との整合性を保ちつつ、エネルギー効率とメンテナンス性を両立させることが重要です。
保守・運用の面では、集じん設備は定期的な点検と清掃により性能を維持しなければなりません。フィルタ式集じん機では、フィルタの目詰まりによる圧力差の増大を監視し、必要に応じてパルスジェット洗浄やフィルタ交換を行います。サイクロンでは、内部の堆積物や摩耗状況を点検し、効率低下を防ぐための清掃や補修が必要です。湿式集じん設備では、スプレーノズルの詰まり、水槽・配管のスケールやスラッジ堆積、水質変化を管理し、適切な排水処理を行うことが求められます。送風機についても、羽根車の汚れ・摩耗、軸受の潤滑状態、振動レベル、モータ温度などを継続的にチェックし、異常があれば早急に対処します。これらを総合的に実施することで、集じん設備は長期にわたり安定した集じん性能と環境保全機能を発揮し、鉱山をはじめとするさまざまな産業現場で不可欠な役割を果たします。