スマート送風機は、各種センサ、インバータ制御、IoT 通信、データ解析などの技術を組み合わせることで、従来の送風機に比べて高度な風量制御と状態監視、予知保全機能を備えた次世代型送風機です。鉱山換気や産業換気の分野では、省エネ要求と安全性向上のニーズが年々高まっており、単に風を送るだけでなく、運転状況をリアルタイムに可視化し、必要な時に必要なだけ風量を供給する「スマート換気」が求められています。スマート送風機は、こうしたニーズに応える中核機器として、鉱山用主扇・局所扇・遠心送風機などに順次導入が進んでいます。
構成要素としては、まず高効率モータとインバータを組み合わせた可変速駆動が挙げられます。これにより、坑内の風量要求やガス濃度、作業エリアの稼働状況に応じて送風機の回転数を連続的に制御し、無駄な風量供給を抑えて省エネ運転を実現できます。さらに、振動センサ・温度センサ・電流センサ・圧力センサなどを送風機本体やダクトに配置し、運転データを常時収集することで、軸受の異常、羽根車のアンバランス、ダクト詰まりなどの兆候を早期に検出することが可能になります。収集されたデータは、ローカルな監視盤や上位の監視システム、クラウドプラットフォームに送信され、リアルタイム監視や履歴解析、AI による予知保全に活用されます。
鉱山換気への応用では、スマート送風機を通気ネットワーク全体に分散配置し、換気制御システムと連携させることで、坑内各区画のガス濃度・粉じん濃度・温度・人員配置などに応じた動的な風量配分が可能になります。例えば、稼働していない区域の局所送風機を自動的に停止させたり、ガス濃度が上昇した区域では風量を増加させたりすることで、安全性を維持しながらエネルギー使用量を削減できます。また、異常な振動や温度上昇が検出された場合には、アラーム通知や自動減速・停止などの保護動作を行うことで、重大故障や事故の発生を未然に防ぐことができます。これにより、通風設備の稼働率向上と保守コストの最適化が期待できます。
運用・保守の観点からは、スマート送風機はデジタルツインや予知保全と相性が良く、送風機の状態をデータベース化して長期トレンドを分析することで、最適な点検周期や部品交換タイミングを導き出すことができます。従来の時間基準保全から状態基準保全へ移行することで、過剰保守や保守不足を避け、合理的なメンテナンス計画を立てることが可能です。また、遠隔監視機能を活用すれば、山間部や海外鉱山に設置された送風機であっても、本社やサービスセンターから状態把握と技術支援を行うことができます。スマート送風機は、こうしたデジタル技術と組み合わさることで、鉱山・トンネル・各種産業における換気システムの省エネ・安全・信頼性を新たなレベルへ引き上げるソリューションとして位置づけられています。
