耐摩耗送風機は、粉じんや粒子を多く含むガスを長期間搬送するために特別設計された送風機であり、鉱山や建材工場、冶金工場、セメントプラントなど、高粉じん環境で不可欠な設備です。通常の送風機を粉じん負荷の高いラインに使用すると、羽根車やケーシングの摩耗が急速に進行し、短期間で性能低下や漏えい、最悪の場合には破損につながります。耐摩耗送風機は、材質・構造・流路設計を工夫することで、摩耗を抑えながら安定した風量と静圧を長期にわたり維持するよう設計されており、鉱山通風や集じん、粉体搬送などの重要プロセスを支えます。
耐摩耗送風機の典型的な用途として、鉱山における粉じん集じんシステムや選鉱設備の排気ライン、破砕・搬送設備周辺の含じんガス搬送、セメントや石灰、ガラス原料を扱う建材工場の高粉じんライン、冶金工場の集じん排風などが挙げられます。これらの現場では、粉じんの粒径や硬さ、濃度が高く、流速も大きいため、一般的な送風機では短期間で羽根先端やケーシング内面が削られ、性能と寿命が大きく損なわれます。耐摩耗送風機では、ラジアルブレード型の遠心羽根車や、流れ方向を最適化したケーシング形状を採用することで、粉じんとの衝突や擦過を最小限に抑えます。
耐摩耗送風機の材質選定では、耐摩耗鋼や硬質合金、肉盛り溶接、交換可能なライナー板などを組み合わせて使用します。特に衝突が集中するケーシングの曲がり部や羽根先端付近には、厚みのあるライナーや補強板を配置し、摩耗した部分のみを交換できる構造とすることで、保守性とコスト効率を高めます。また、粉じんの流れを滑らかに導くために、流路内の急激な方向変化や局部的な高速領域を避ける設計が行われます。必要に応じて、流速を適切に制御し、摩耗と圧力損失のバランスを最適化することも重要です。さらに、省エネを意識して高効率モータやインバータ制御を組み合わせれば、負荷変動に応じた柔軟な運転が可能となります。
運用・保守の観点では、耐摩耗送風機であっても、粉じん環境で長期間運転されることで、徐々に摩耗が進行します。そのため、定期的な内部点検と厚さ測定を行い、ライナーや羽根車の摩耗状況を把握することが重要です。摩耗の進行状態を記録し、計画的な部品交換を行うことで、突発的な破損や性能急低下を防ぐことができます。振動や騒音の変化、電流値の増加は、摩耗や堆積によるアンバランスの兆候であることが多く、状態監視システムを用いた早期検知が有効です。適切に設計・保守された耐摩耗送風機は、鉱山や重工業の高粉じんラインで長期にわたり安定した通風を提供し、生産設備全体の信頼性向上と保守コスト低減に大きく貢献します。