炭鉱用集じん送風機は、採炭作業や掘進作業、装炭・積込み工程などで多量に発生する炭じんを効率的に吸引・捕集し、坑内の粉じん濃度を低減することを目的とした専用送風機です。炭鉱では、炭じんが長時間にわたり浮遊した状態になると、視界不良や作業効率低下だけでなく、じん肺の発症リスクや炭じん爆発の危険性が高まります。炭鉱用集じん送風機は、粉じんを含んだ空気を吸い込み、集じん装置と組み合わせて粉じんを分離・捕集し、比較的清浄な空気として排出することにより、坑内環境の改善と安全性向上に大きく貢献します。
このタイプの送風機は、一般に高静圧性能を持つ軸流送風機または遠心送風機として設計され、粉じんが多い環境でも安定した風量を確保できるよう、羽根車やケーシングに耐摩耗材や防食コーティングが施されます。湿式集じん方式では、集じん室内で水が噴霧され、炭じんと水滴が衝突することで粉じんを水中に取り込み、スラリー状として回収します。この方式は可燃性粉じんの飛散を抑えるうえで有効であり、炭じん爆発対策としても高い効果を発揮します。乾式方式では、サイクロン分離器やフィルタエレメントを用いて粉じんを捕集し、回収した粉じんを定期的に排出処理することで、安定した集じん性能を維持します。
運用現場では、炭鉱用集じん送風機は粉じん発生源の近くに配置され、フードやダクトを通じて局所的に粉じんを吸引します。採炭切羽のコンベヤ受け渡し部やクラッシャー付近、装炭ポイントなど、粉じんが集中的に発生する場所に集じんフードを設置し、炭鉱用集じん送風機で吸い上げることで、作業員の呼吸域での粉じん濃度を大幅に低減できます。また、インバータ制御を用いれば、粉じん発生量や稼働時間に応じて風量を調整し、必要以上の消費電力を抑えながら集じん効果を最大限に高めることが可能です。
保守・管理においては、炭鉱用集じん送風機は粉じんや湿気にさらされるため、羽根車の汚れや磨耗、ケーシング内面の堆積、ダクト内の閉塞などに特に注意する必要があります。湿式方式の場合はスプレーノズルの詰まりや水質変化、スラッジタンクの堆積状況を定期的に点検し、適切な清掃と排出処理を行わなければなりません。乾式方式では、フィルタエレメントの目詰まりによる圧力損失の増加や、フィルタ破損による粉じん漏れに注意が必要です。さらに、送風機本体については、軸受の潤滑状態、振動・騒音の変化、電動機の温度や電流値などを継続的に監視し、異常があれば早期に対応することで、長期的な安定稼働が実現できます。適切な設計と運用、丁寧な保守を組み合わせることで、炭鉱用集じん送風機は粉じん対策と安全管理の中核設備として信頼性の高い役割を果たします。