予防保全は、鉱山用送風機のような重要設備に対して、故障発生前に計画的な点検・整備を行うことで、突発停止と重大事故を防ぐ保全戦略です。従来の事後保全では、送風機が故障してから修理を行うため、換気能力の低下や生産ラインの停止、安全リスクの増大など多くの問題が発生します。特に鉱山の主扇は換気システムの心臓部であり、停止すると作業者の退避や操業停止が不可避となるため、予防保全による信頼性確保が不可欠です。予防保全は、定期点検と状態監視を組み合わせた計画的なメンテナンス活動として位置づけられます。
予防保全の基本は、送風機の重要部位ごとに点検周期と作業内容を定めた保全計画を策定することです。羽根車、軸受、シャフト、シール、ボルト締結部、電動機、制御盤など、それぞれに適した点検方法と交換基準を設定し、日常点検・月次点検・年次点検などの形で体系的に実施します。これにより、部品が限界に達する前に摩耗や劣化を発見し、計画停止のタイミングで効率よく交換や修理を行うことができます。局所送風機に対しても同様に、ダクトの破損や吸込側閉塞、電源ケーブルの損傷などを定期的に確認することで、切羽換気のトラブルを予防できます。
近年では、予防保全をさらに高度化した「予知保全」の考え方も鉱山用送風機に適用されつつあります。振動モニタリングや温度監視、電流解析などの状態監視技術を活用し、運転データのトレンドから故障の兆候を読み取ることで、交換時期や整備タイミングをより精度高く判断できます。これにより、まだ十分な寿命を残した部品を早期に交換してしまう無駄や、逆に交換が遅れて故障が顕在化してしまうリスクを減らすことができます。予防保全と予知保全を組み合わせることで、送風機のライフサイクル全体を通じた保全最適化が可能になります。
予防保全を効果的に運用するには、保守記録と故障履歴の蓄積も重要です。各点検での測定値や交換部品、異常の有無を詳細に記録し、故障発生時には原因分析結果とともにデータベース化しておくことで、次回以降の保全計画の見直しに活かすことができます。また、送風機メーカーと情報を共有し、現場データに基づいた設計改良や保守手順の改善を行えば、設備全体の信頼性がさらに向上します。予防保全は、鉱山用送風機の安全運転と省エネルギー運用を支える基盤であり、長期的な視点で継続的に取り組むべき重要なマネジメントプロセスと言えるでしょう。
