ガイドベーン最適化は、鉱山用送風機の効率を高め、省エネと性能向上を同時に実現するための重要な設計・改造手法です。軸流送風機や対向回転軸流送風機では、入口ガイドベーンや出口ガイドベーンが気流の方向を整え、羽根車への流入角を制御する役割を担っています。ガイドベーンが適切な角度と形状で設計されていないと、羽根車前後で強い旋回流や剥離が生じ、エネルギー損失と騒音の増加につながります。ガイドベーン最適化では、これらの流れを滑らかに整えることで、同じ電力でより大きな風量と圧力を得られるようにし、鉱山換気システム全体の省エネに貢献します。
具体的には、ガイドベーンの枚数、取付角度、翼型形状、取り付け位置などを総合的に検討します。入口ガイドベーンは、ダクトから流入する気流に適切なスワールを与え、羽根車の迎え角を最適化することで、失速を抑え高効率の運転点を維持する役割があります。一方、出口ガイドベーンは、羽根車通過後の旋回成分を直線流に変換し、動圧を静圧に効率よく変換する働きを担います。ガイドベーン最適化では、これらの翼のキャンバーや厚み、取付角を調整することで、流線が滑らかで剥離の少ない流れ場を実現し、損失を減少させます。
ガイドベーン最適化は、新設送風機の設計段階だけでなく、既設設備の性能改善にも有効です。鉱山用主扇について、運転データや測定結果から期待性能に対して効率が低いことが判明した場合、ガイドベーンの角度調整や一部形状変更により性能を向上できるケースがあります。また、採掘範囲の拡大や換気計画の変更に伴い、送風機の運転点が当初想定と変化した際にも、ガイドベーンを見直すことで新たな運転条件に適した性能カーブを得ることができます。これにより、送風機本体を入れ替えることなく、比較的小さな改造で省エネ効果と風量確保の両立が可能になります。
近年は、ガイドベーン最適化に数値流体解析を活用する事例も増えています。CFD解析により、羽根車前後の流れ場を詳細に可視化し、渦や剥離が発生している領域を特定することで、ガイドベーン形状の改善ポイントを明確にできます。解析結果をもとに試験用ガイドベーンを製作し、実機試験で性能曲線や騒音レベルを確認すれば、鉱山用送風機に最適なガイドベーン仕様を高精度で決定できます。ガイドベーン最適化は、鉱山換気の安全性を確保しつつ電力消費を削減するうえで、設計・改造・運用の各段階で活用できる有効な技術であり、高効率かつ信頼性の高い換気システム構築に大きく貢献します。