排熱回収は、鉱山用送風機や産業換気設備から排出される温かい排気やプロセスガスの熱エネルギーを有効利用し、省エネとコスト削減を実現するための重要な技術です。鉱山や工場では、機械設備やプロセスから発生した熱が換気排気として大気中に放出されていることが多く、その中には再利用可能なエネルギーが多く含まれています。排熱回収システムを導入することで、換気排気の熱を熱交換器で回収し、事務所や作業場の暖房、温水供給、さらには他のプロセス加熱に利用することができ、電力や燃料の使用量を削減できます。
鉱山用送風機における排熱回収では、主に地上排気側のダクトに熱交換器を設置します。排気温度や粉じん濃度、ガス成分に応じて、プレート式、シェル&チューブ式、回転蓄熱式など適切な熱交換方式を選定します。高濃度の粉じんや腐食性成分が含まれる場合、熱交換器の目詰まりや腐食を防ぐため、事前集じんや耐食材質の採用が重要です。回収した熱は、温水回路や空気ダクトを通じて事務棟や更衣室、ワークショップの暖房に利用できるほか、冬季の吸気予熱として使用することで、外気温が低い環境でも送風機やダクトの凍結リスクを低減し、換気系統の安定運転に寄与します。
排熱回収の省エネ効果を評価する際には、回収可能な熱量とそれによって代替できる燃料・電力の量を試算する必要があります。換気排気の風量、温度差、稼働時間から年間の回収熱量を算出し、その熱をボイラや電気ヒーターでまかなった場合のコストと比較します。鉱山のように長時間一定の換気が必要な現場では、排熱回収の稼働時間が長くなるため、投資回収期間が比較的短くなるケースも多く見られます。また、排熱回収によってボイラ負荷が低減すれば、燃焼に伴うCO₂排出量も削減でき、環境面でのメリットも期待できます。
排熱回収システムを安定して運用するためには、熱交換器の清掃や点検が欠かせません。粉じんやスケールが蓄積すると熱交換効率が低下し、圧力損失の増加によって送風機に余分な負荷がかかる可能性があります。定期的な洗浄や点検を計画に組み込み、必要に応じてバイパス回路や予備熱交換器を設けることで、換気停止を伴わない保守が可能になります。排熱回収は、鉱山用送風機を中核とする換気システムにおいて、失われがちな熱エネルギーを再利用する賢い省エネ手段であり、エネルギーコストの削減と環境負荷低減の両面で大きな効果を発揮します。