インバータ送風機は、インバータ(周波数変換器)を用いて電動機の回転数を連続的に制御できる送風機であり、鉱山換気やトンネル換気、各種産業プラントの換気・プロセス用送風システムで広く採用されています。従来の固定回転数送風機では、必要風量が変動してもダンパーや風門で絞る方法が一般的でしたが、この方式では大きなエネルギー損失が発生します。インバータ送風機は、回転数を直接制御することで必要風量に応じた最適な運転点を実現し、省エネ性と通風安定性の両方を向上させることができます。
鉱山分野では、採掘進展や出鉱量、ガス発生状況、季節による温度変化などにより、必要な換気量が時間とともに変化します。インバータ送風機を主扇や局扇に適用すれば、坑内のガス濃度や温度、作業エリアの稼働状況に応じて風量を自動調整するスマート換気システムを構築できます。これにより、必要以上の風量を抑えながら安全基準を満たし、通風システム全体の電力使用量を大幅に削減できます。トンネル換気や地下駐車場、産業プラントの換気でも、インバータ送風機は同様に効果的です。
技術面では、インバータ送風機は送風機の性能曲線とインバータの制御特性を組み合わせて設計されます。回転数を下げると風量はほぼ回転数に比例して減少し、全圧は回転数の二乗、消費電力は三乗に比例して減少するという「ファンの法則」が適用されます。この性質により、少し回転数を下げるだけで大きな電力削減効果が得られます。インバータはソフトスタート機能を備えており、起動電流の抑制や機械的衝撃の低減にも寄与します。これにより、送風機や電動機、電源設備の負荷を軽減し、設備寿命の延長につながります。
運転・保守の観点では、インバータ送風機は適切な制御ロジックの設定と保護機能の活用が重要です。過電流、過電圧、過熱、地絡などに対する保護機能を適切に設定することで、異常時には自動停止や警報を発し、設備と作業者の安全を守ります。鉱山やプラントでは、監視システムと連携させてインバータ送風機の運転状態や電力使用量を可視化し、エネルギー管理や予防保全に活用できます。インバータ送風機は、鉱山用主扇・局扇をはじめとする換気設備の省エネとスマート化を推進する中核技術であり、今後の通風システムにおける標準仕様となりつつあります。