化学工業用集じん送風機は、バグフィルタ、サイクロン、スクラバーなどの集じん装置と組み合わせて使用される専用の遠心送風機であり、反応工程や乾燥工程、粉体ハンドリング工程で発生する粉じんを効率的に捕集するための重要な設備です。化学プラントでは、粉体原料の投入、混合、乾燥、包装などの各プロセスで微細な粉じんが発生し、そのまま放出されると作業環境の悪化や設備故障、環境規制違反の原因となります。化学工業用集じん送風機は、集じん装置を通過するガス流量を安定的に維持し、集じん効率を最大限に発揮させる役割を担います。
この種の送風機は、多くの場合、高静圧・中風量型の遠心構造を採用しています。集じん装置にはフィルタ、ダクト、ダンパ、煙道など多数の圧力損失要素が含まれるため、送風機には十分な圧力余裕が必要です。インペラやケーシングの設計では、粉じんによる摩耗と付着に配慮し、耐摩耗鋼の採用や補強ライニング、防塵シール構造などが適用されます。また、集じん前（ダーティ側）に設置される場合、粉じん濃度が高くなるため、インペラの形状選定と回転数設定では、摩耗と効率のバランスを考慮した仕様が求められます。集じん後（クリーン側）に設置する場合も、フィルタ差圧の変動に対応できる圧力特性が必要です。
化学工業用集じん送風機は、粉体原料サイロや混合室の局所排気、乾燥装置の排気処理、包装ラインの集じんなど、工場内のさまざまなポイントに導入されます。例えば、乾燥設備からの排気では、高温かつ粉じんを含んだガスをサイクロンとバグフィルタで段階的に処理し、その後集じん送風機によって煙道へ搬送します。このようなシステムでは、送風機の性能が粉じん排出濃度や装置差圧の安定性に大きく影響するため、化学プラントの条件に合わせた精度の高い機種選定が重要です。
さらに、化学工業用集じん送風機では、省エネと保守性の観点も無視できません。インバータ制御により風量を適切に調整すれば、集じん装置の差圧変動に追従しながら電力消費を抑えることができます。振動や軸受温度の監視は、粉じんによるアンバランスや摩耗の進行を早期に把握するうえで有効であり、定期的な点検と組み合わせることで、長期安定運転を実現します。鉱山向け集じん送風機で培われた耐摩耗・高信頼設計を取り入れた化学工業用集じん送風機は、工場内の粉じん対策と環境保全に大きく貢献するソリューションです。
