コンパクト構造送風機は、設置スペースが限られた環境で高い換気性能を発揮することを目的として設計された小型・省スペース型の送風機です。鉱山やトンネル、地下工事現場では、坑道断面が狭く、採掘設備や配管、ケーブルなどが複雑に配置されるため、大型の送風機を自由に設置できないケースが少なくありません。コンパクト構造送風機は、こうした制約条件の中でも必要な風量と静圧を確保し、作業区域に新鮮空気を届けるための実用的な解決策として活躍します。特に、局所換気や補助換気、設備冷却など、ピンポイントでの送風が求められる用途に適しています。
本形式の送風機では、筐体やフレームのレイアウトを最適化し、全長や外径を抑えながら流路のスムーズさを維持する工夫が施されています。軸流型の場合は、短いケーシングの中でも効率良く空気を搬送できる翼形状やハブ比が採用され、遠心型では省スペースでも十分な全圧を確保できるスクロール形状や羽根形式が検討されています。鉱山用途では、堅牢な構造と軽量性のバランスが重視され、持ち運びや吊り下げ作業に配慮した取手・吊り金具の配置、衝撃に強いケーシング材質などが選択されます。これにより、掘進の進行や作業レイアウトの変更に合わせて柔軟に設置位置を変えることが可能になります。
コンパクト構造送風機は、単独での使用だけでなく、鉱山換気設備全体の中で補助的な役割を担うことも多くあります。例えば、主換気送風機や局所送風機によって形成された通気網の一部に配置し、特定の分岐坑道や機械室、積込設備周辺の通気を強化する用途が挙げられます。また、集じん装置や冷却コイル、熱交換器などと組み合わせて、粉じん除去や熱対策を行う補助送風機としても利用できます。インバータ制御と組み合わせることで、必要に応じて風量を調整しながら、省エネと通気性能の両立を図ることも可能です。コンパクトであるがゆえに増設や移設が容易であり、現場の状況変化に柔軟に対応できる点が大きなメリットです。
運用・保守の観点では、コンパクト構造送風機は点検性の高さも重要な要素となります。内部スペースが限られるため、羽根車や軸受部にアクセスしやすい点検カバーや分割構造が採用されることが多く、坑内での整備時間を短縮する工夫が求められます。粉じんや湿気の多い鉱山環境では、ケーシング内部の汚れや腐食状態を定期的に確認し、清掃や防錆処理を行うことで長期的な性能維持につながります。振動や騒音レベル、電流値などの運転データを継続的に監視し、異常傾向を早期に把握すれば、突発的な停止を防ぎ、安全かつ安定した換気運転を実現できます。コンパクト構造送風機は、その省スペース性と柔軟な運用性により、鉱山換気システムや産業換気システムの中で非常に実用価値の高い送風機として位置付けられます。