コストメリットは、鉱山用送風機や換気システムへの投資効果を、初期費用だけでなく運転コストや保守コストも含めたライフサイクル全体で評価するための重要な考え方です。鉱山換気は、大型の主扇や多数の局所送風機を長時間運転するため、電力費用が操業コストの中で非常に大きな割合を占めます。そのため、送風機の効率向上やインバータ導入、省エネ制御などの投資は、単に設備更新にとどまらず、長期的なコスト削減につながる「コストメリット」を生み出します。経営や技術部門が協力して、このコストメリットを定量的に把握することが、賢い設備投資の前提条件となります。
コストメリットを評価する際には、まず現状の運転データから年間の電力消費量と電力単価を把握し、現行システムのランニングコストを明確にします。そのうえで、高効率鉱山用送風機やインバータ制御の導入によってどの程度の電力量削減が見込めるかを試算します。例えば、送風機効率の向上と回転数制御により、年間で10〜20％の電力削減が可能なケースも多く、その削減額を設備投資額と比較することで、投資回収期間や年間純利益の増加分を計算できます。また、故障頻度の低減やメンテナンス周期の延長による保守費用削減も、コストメリットの重要な要素です。
鉱山用送風機のコストメリットは、安全性と信頼性と両立させる形で評価される必要があります。単に安価な機種を選定すれば初期費用は抑えられますが、効率の低さや故障リスクの高さが長期的な電力費用や修理費用の増加につながることがあります。一方で、高効率で堅牢な機種や高度なモニタリング・予知保全システムを導入すれば、初期投資は増えますが、停止リスク低減と安定運転による経済効果が期待できます。コストメリットの検討では、これらの要素をバランスよく評価し、「最も安い設備」ではなく「最も経済的な設備」を選ぶことが重要です。
さらに、コストメリットは長期的な換気計画や鉱山寿命とも密接に関係します。鉱山の採掘範囲が拡大し、必要換気量が増加していく場合には、将来的な負荷増加を見越した送風機容量やシステム構成を検討する必要があります。拡張性の高いモジュール式送風機や、多段運転が可能なインバータ制御システムを採用すれば、需要増加に柔軟に対応しながら運転コストを抑えることができます。コストメリットを的確に評価し、それを設備選定・更新計画・省エネ対策に反映させることで、鉱山用換気設備は安全性を維持しながら、長期にわたり高い経済性を発揮することができます。
