メカニカルシールは、鉱山用送風機や産業用遠心送風機の回転軸周辺に使用される高性能な軸封装置です。回転するシャフトと固定側のシールリングを密着させることで、内部のガスや粉じんが外部へ漏れ出すことを防ぎ、同時に外部の空気や水分が機内に侵入するのを抑制します。特に、高温ガスや腐食性ガスを扱う化学工業用送風機、冶金・ガラス業界の高温排ガス送風機では、メカニカルシールの信頼性が送風機全体の安全性に直結します。鉱山換気においても、粉じんやガスの漏洩を抑えることは作業環境と防爆安全の両面で重要な課題であり、メカニカルシールはその解決に大きな役割を果たします。
メカニカルシールの基本構造は、回転側リングと固定側リングの平滑なシール面をばね力と流体圧で密着させ、その間に形成される薄い流体膜によって密封する仕組みです。シール面には、炭素材料、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドなどの耐摩耗性・耐熱性に優れた材質が用いられ、ガスや液体の漏れを最小限に抑えながら長寿命を実現します。鉱山用送風機に適用する場合は、粉じんを多く含む気流にさらされるため、シール部の保護構造やパージガスの導入を検討し、シール面に異物が侵入しにくい設計とすることが重要です。
メカニカルシールを安定して運用するには、適切な設計と設置、そして保守が不可欠です。軸の振れや芯ずれが大きいとシール面の偏摩耗や欠けを招き、短期間で漏れ量が増加してしまいます。そのため、送風機の設置時にはシャフトアライメントを丁寧に調整し、許容範囲内の振動レベルに収まるようにします。また、シール部分への冷却やパージガス供給が設置されている場合は、流量や圧力を適正に管理し、シール面が過熱したり、粉じんにより傷ついたりしないよう注意する必要があります。定期点検では、漏れ量の変化や周辺の汚れ、異音の有無を確認し、異常が見られる場合には早めの分解点検と部品交換を計画します。
メカニカルシールは、従来のグランドパッキンに比べて密封性能が高く、漏れによるエネルギーロスや腐食のリスクを低減できるだけでなく、保守間隔の延長にもつながります。鉱山用送風機においては、特に高温・高圧・高濃度粉じんといった過酷条件でその真価を発揮し、換気設備全体の信頼性向上と安全運転に貢献します。適切な選定と運用を行うことで、メカニカルシールは鉱山換気システムの重要な構成要素として長期にわたり安定した性能を提供し、作業環境と周辺環境の保全に寄与します。