増圧ファンは、鉱山の通気回路の一部に追加して設置される送風機であり、主扇風機だけでは十分な風量や静圧を確保しにくい区域に対して通気を補強するために用いられる設備である。坑道が長距離化したり、断面が狭かったりする場合、通気抵抗が大きくなって主扇風機の負荷が増し、坑内の一部で風量不足が生じることがある。こうした状況に対して増圧ファンを適切に配置することで、必要な通気を確保しつつ主扇風機の負担を軽減できる。
増圧ファンは、通気回路上で主扇風機と直列関係を形成し、全体の静圧を段階的に高める役割を担う。そのため、設計にあたっては主扇風機との風量整合が非常に重要であり、性能が合わないと通気回路内で不安定な流れや風量の偏りが生じるおそれがある。増圧ファンの形式としては、大風量が必要な場合に適した軸流タイプと、高い静圧を必要とする場合に適した遠心タイプがあり、通気抵抗の特性や設置スペースに応じて選定される。
増圧ファンを鉱山で運用する場合、安全性への配慮が欠かせない。ガス湧出区域に近い位置に設置されることも多いため、防爆構造の採用や火花発生を抑えた設計が必要となる。また、増圧ファンの停止や誤運転は局所的な風量低下や通気方向の変化を引き起こし、ガス滞留や粉じん濃度上昇の原因となり得る。そのため、運転状況の監視と、主扇風機との連動制御、非常時の停止手順などを明確にしておくことが重要である。
増圧ファンの導入にあたっては、通気網全体への影響を通気計算によって十分に検証する必要がある。単に風量を増やすだけでなく、どの区間にどの程度の風を配分するかを踏まえて配置計画を立てなければならない。誤った配置は、一部区域で過大な風量が流れる一方、他の区域で不足が生じるなど、かえって通気バランスを乱す可能性がある。
適切に設計された増圧ファンは、鉱山通気システムの柔軟性を高め、深部化・長距離化が進む鉱山においても安定した通気を維持するための有効な手段となる。主扇風機と増圧ファンの組み合わせによる多段通気は、今後も鉱山の規模拡大や採掘深度の増大に対応するための重要な技術として位置付けられており、その適切な運用が鉱山の安全と生産性向上に大きく貢献する。