DC遠心送風機は、駆動源に直流モーターを採用した遠心送風機であり、鉱山や地下工事、トンネルなどの過酷な現場で、非常用換気や可搬型換気装置として用いられることが多い機種です。交流電源が安定供給される設備では三相モーターが一般的ですが、停電リスクが高い現場や移動電源を併用する現場では、バッテリーや直流電源と組み合わせたDC遠心送風機が有効です。鉱山用換気システムでは、常用の主換気送風機に加え、停電時にも最低限の換気を確保するバックアップ設備が求められ、直流駆動の遠心送風機はその役割を担う選択肢の一つとして注目されています。
DC遠心送風機の特長は、直流モーター特有の優れた制御性と、省エネ性の両立にあります。直流モーターは回転数制御が容易であり、換気負荷に応じた柔軟な風量調整が可能です。また、インバータを使用せずに電圧制御やPWM制御で出力を調整できるため、特定の用途ではシステム構成を簡素化しつつ効率的な運転を行うことができます。遠心構造であるため、一定の静圧を確保したい集じんダクトや局所排気系統、長距離ダクトを伴う坑道換気にも適しており、直流駆動と組み合わせることで、柔軟で信頼性の高い換気システムを構築できます。
鉱山用のDC遠心送風機では、安全性と耐久性が特に重視されます。可燃性ガスや粉じんが存在する坑内では、防爆仕様の直流モーターや防爆端子箱を採用し、スパークや過熱による引火リスクを抑える設計が必要です。また、バッテリー駆動を前提とする場合、所要風量と換気時間に応じて容量を適切に選定し、非常時に十分な運転時間が確保できるようにすることが重要です。遠心送風機部分は、粉じん付着や腐食性ガスに耐える材質やコーティングを採用し、定期的な清掃や点検を通じて長期運転に耐えうる構造とします。こうした配慮により、DC遠心送風機は主設備停止時でも作業者の避難やガス希釈に必要な換気を維持できる安全装置として機能します。
今後、鉱山換気の分野では、省エネと安全性を両立する柔軟なシステム構成がより一層求められます。再生可能エネルギーや蓄電池システムと組み合わせた直流系統の導入が進めば、DC遠心送風機の活用場面はさらに広がる可能性があります。常用の交流駆動送風機とDC遠心送風機によるバックアップを組み合わせることで、停電時にも換気を継続できる強靭なシステムを構築でき、鉱山安全と生産継続性の向上に貢献します。DC遠心送風機は、鉱山用換気設備の中で、信頼性の高い補完的存在として位置づけられており、設計段階から全体システムの一部として検討することが重要です。
