高圧送風機は、高い静圧が要求される長距離ダクトや複雑な換気ネットワーク、高抵抗な集じん装置などに十分な風量を供給するために設計された送風機です。鉱山やトンネルの換気では、坑道が長く分岐も多いため通気抵抗が大きくなり、通常の低圧送風機では必要な風量を確保できない場合があります。高圧送風機は、こうした高抵抗系統に対しても安定した風量を供給し、採掘現場や作業区域に必要な換気量を届ける役割を担っています。また、化学工業や冶金工場の高性能集じんシステムや排ガス処理設備でも、高圧送風機は重要な構成要素となっています。
形式としては、高圧軸流送風機と高圧遠心送風機に大別されます。高圧軸流送風機は、対向回転方式や多段羽根車を採用することで高い静圧を得る構造で、鉱山主扇・トンネル換気用送風機として利用されることが多く、大風量・高静圧を同時に実現できます。一方、高圧遠心送風機は、9-19 型のように羽根車形状とケーシング形状を最適化することで、高静圧かつ比較的高効率を実現した機種であり、化学工業や集じんシステム、ボイラ送風などで広く採用されています。用途と設置条件に応じて、軸流型・遠心型・多段型などを選定し、必要な風量と静圧を満たすように設計します。
鉱山における高圧送風機の代表的な用途は、主扇の補助送風機や局所昇圧用送風機としての使用です。主扇からの風が遠方の切羽まで届きにくい場合、高圧送風機を坑道の途中に設置し、ダクト内圧力をさらに高めることで、風量不足区域を解消することができます。また、高性能集じん装置や湿式スクラバーと組み合わせることで、粉じんや有害ガスを効率よく捕集・処理し、坑内環境や周辺環境の改善に貢献します。トンネル工事や地下工事でも、高圧送風機は長距離換気や煙道排気に欠かせない設備として活用されています。
高圧送風機は、高い圧力と回転速度で運転されることが多いため、運転・保守においては振動管理と軸受管理が非常に重要です。羽根車への粉じん付着や摩耗によってバランスが崩れると、振動が増大し、軸受や基礎に大きな負荷がかかるおそれがあります。そのため、定期的な内部清掃とバランス確認、軸受温度と潤滑状態の監視が不可欠です。また、高圧運転ではダクトやフランジ部の気密性も性能に直結するため、漏風やガス漏えいがないかを日常点検で確認します。インバータ制御を導入すれば、必要な静圧・風量に応じて回転数をきめ細かく調整でき、省エネと設備保護の面でも大きな効果が期待できます。適切な設計と運転管理により、高圧送風機は鉱山換気や産業換気の要として、安定した高静圧通風を長期にわたり提供します。
