低圧送風機は、比較的低い静圧条件で大風量を供給する用途に適した送風機であり、工場・倉庫・作業場の一般換気や、鉱山施設周辺の建屋換気、低抵抗ダクトを用いた空調補助などに広く使用されています。鉱山や重工業の設備というと高圧・高静圧の送風機をイメージしがちですが、実際の通風システムでは、集じんラインや高抵抗ダクトばかりでなく、低圧で十分なエリアも多く存在します。低圧送風機を適切に使い分けることで、必要以上に高静圧機を使用する無駄を避け、エネルギーコストを削減しつつ安定した換気を実現することができます。
形式としては、低圧軸流送風機と低圧遠心送風機があり、特に大空間の換気や給排気では軸流形式が多く採用されます。軸流形式は構造が比較的シンプルで、ストレートな風路に設置しやすく、軽量でメンテナンスも容易です。低圧遠心送風機は、集風フードや短いダクトと組み合わせて、局部的な排気・換気を行う用途で利用されます。低圧送風機はいずれも、風量重視かつ静圧の要求が比較的低い系統に適しており、騒音・振動レベルも高圧機に比べて抑えやすいのが特徴です。
鉱山関連の施設では、坑内主扇や局所扇といった高圧機に加え、坑口建屋、選鉱プラント、整備工場、倉庫、事務所など、多数の建屋換気が必要になります。これらの区域は通風抵抗が低いため、低圧送風機で十分な換気性能を確保でき、高圧機を用いるよりも大幅な省エネにつながります。例えば、屋根上や外壁に低圧軸流送風機を設置し、自然換気と組み合わせることで、粉じんや熱気を効率よく排出し、作業者の熱ストレスや粉じん暴露を低減することができます。また、地下駐車場やトンネル出入口周辺の一般換気にも、低圧送風機は適した選択肢となります。
省エネの観点では、低圧送風機は通風抵抗の低い系統に対して非常に高いエネルギー効率を発揮します。送風機の消費電力は、おおよそ風量と圧力に比例するため、必要静圧より過剰な圧力を発生させる設計は、エネルギーの無駄遣いにつながります。低圧送風機を適所に配置し、インバータ制御と組み合わせることで、実際の負荷に応じた最適な風量制御が可能になり、トータルの電力使用量を抑えることができます。保守管理においては、構造がシンプルである分、点検も容易であり、羽根車の清掃や軸受の潤滑、ボルトの締結確認など、基本的なメンテナンスを着実に行うことで長寿命化が期待できます。低圧送風機を高圧機と適切に組み合わせることにより、鉱山や工場の換気システムは、安全性と省エネ性を両立したバランスの良い通風設計を実現できます。
