カスタム軸流送風機は、軸流構造の特長である大風量とコンパクトな形状を活かしつつ、鉱山やトンネル、各種産業設備の個別条件に合わせて設計される特注タイプの軸流送風機です。標準品では口径や回転数、羽根角度、騒音レベルなどが現場の要求と合わない場合、カスタム軸流送風機を採用することで、必要風量・全圧・効率・据付寸法のバランスを最適化できます。特に鉱山用としては、主換気・還風・坑内局所換気など用途ごとに条件が異なるため、通気網の構成や将来計画も視野に入れた個別設計が重要になります。
鉱山向けカスタム軸流送風機では、まず通気計算に基づき、風量・全圧・風速の目標値を設定します。そのうえで、羽根車径、羽根数、ピッチ角、回転数を組み合わせ、性能曲線上で効率の高い運転点を確保できるよう設計を行います。必要に応じて対向回転構造や多段構造を採用し、高静圧が求められる通気系統にも対応します。また、防爆電動機や防爆制御盤との組み合わせ、ガス検知システムとの連動など、鉱山特有の安全要件もカスタム仕様に反映されます。粉じんが多く付着・摩耗が懸念される現場では、羽根材料に高強度鋼や耐摩耗鋼を採用したり、表面硬化処理を施すことで、長寿命化と性能維持を図ります。
カスタム軸流送風機のもう一つのポイントは、設置スペースや搬入経路への対応です。立坑上部や地上換気所、狭い坑道入口など、大型機器の設置が制限される場所では、分割搬入・現場組立が可能な構造や、横置き・縦置きの自由度を持たせたケーシング設計が求められます。さらに、インバータ制御との組み合わせによって、採掘進行やシフトごとの通気需要に応じて回転数を柔軟に変更できれば、電力コストを抑えつつ換気安全を維持できます。非常時の換気シナリオに備え、風向切替や予備機との切替方式を事前に設計に組み込んでおくことも、カスタム設計ならではの強みです。
運用・保守の段階では、カスタム軸流送風機に対して、定期的な性能確認と状態監視を実施することが重要です。振動レベル、軸受温度、電流値、騒音などの変化は、羽根車の汚れや摩耗、バランス崩れ、軸受劣化の初期兆候となります。オンライン監視システムや定期点検を通じてこうした兆候を早期に把握し、計画的な保守・更新を行うことで、鉱山通気に不可欠なカスタム軸流送風機を長期にわたり安定運転させることができます。現場条件に合わせて設計されたカスタム軸流送風機は、鉱山換気の安全性・効率性・省エネ性を高い水準で実現するための有力な選択肢です。
